私たちは日常生活のなかでいろいろな「経験」をします。
今日は楽しかった。
とか
今日は散々なことばかり起こった
とか

この「体験」は普通は、自分の外で起こることだと思っています。でも、それは本当なのでしょうか。

ここでちょっと「思考実験」をしてみましょう。
思考実験とは、自分でイメージを思い浮かべてみて、どのような感情や感覚が起こってくるかを確かめてみることです。私たちの脳は実際に起こったことと頭の中でイメージしただけのことを区別することが出来ないので、イメージするだけで「疑似体験」することが出来ます。

次の文章を読みながら。ちょととご自身でもイメージしてみてください。


あなたは、交通量の多い道路の傍らで、行きかいする車をじっと眺めています。時に何物も囚われれることなくただ、そこを行きかう車や自転車や人を見ているのです。

いろいろな車や自転車、人が通るでしょうが、あなたは特に何にも気を引き付けられることはないでしょう。
そこには何も起こりません。
つまり、私たちは何も「経験」していないということになります。ただ目の前に車や自転車や人が行きかっているだけで、それはあなたにとってはなんの「印象」ももたらしません。

そこに、突然初恋の人に似た人が車に乗って通るのが見えました。

何が起こるでしょうか?

胸が急にドキドキとしてくるかもしれません。
とても懐かしい温かい気持ちが起こるかもしれません。
あるいは、逆にとても悲しい気持ちが飛び出してくるかもしれません。

あなたは、その瞬間何かを「経験」したのです。

初恋の人に似た人を見たときに起こった「体験」はひとによっていろいろです。その通行人の人がきっかけになったとはいえ、「体験」の原因はその人には関係ありません。

では、何が経験を生み出すのでしょうか?
それは、私たちの「記憶」なのです。

人によって、それぞれの持つ「記憶」が異なるため、同じ「出来事」であっても「体験」が全く異なってくる
というわけです。

「体験」を創りだしているのは、外で起こる出来事ではなく、私たちの心の中にあるということです。