シニアが無理なく動けるキッチンの仕組み作りとは

こんにちは!ライフオーガナイザーの藤本 恭子です。
 
 
皆さんは昔は特に意識せずに出来ていたことが最近億劫になってきたとか、昔に比べてやりづらくなったなど感じたことはありませんか?
 
ライフステージの変化は、ホルモンバランスや体力、それに伴うメンタル面の変化も大きいのではないでしょうか??
 
自分でも気が付かないような微妙な身体能力の変化で、仕事や家庭での作業のモチベーションが変わるということは良く耳にします。
 

 

今日は高齢の母のために実家のキッチンの動線を見直ししたことについてご紹介します。

 
 

実は昨年、母は腰椎圧迫骨折で3か月入院し、退院後のケアを私が担当しました。

 

私の母は現在86歳で現在一人暮らし、当時の介護度は要介護1の状態でした。
母の趣味は手芸と料理。骨粗しょう症のため転倒すると寝たきりになるリスクも抱えています。
 
昔はとても料理好きな母で数年前までは、キッチンに立つのも苦にしませんでしたが、最近は特に足腰が弱くなりすっかり台所に立つ回数は減ってきました。
しかしそのせいで、近頃は母の生活に以前の様な張りが無くなって来たのも確かです。
 
 
退院後の母のケアで実家に滞在するのは約1か月の予定。せっかくならこの機会にと、母の生活導線の見直しもすることになりました。
要所要所に必要な手すりを設置したり、玄関に座れるチェアなども置いて、出来るだけ楽にそして安全に生活出来る準備を整えていきました。

 

  

 

 

 

ライフステージによって使いやすいキッチンの導線はどう変わる?

もともと今回の骨折前から、母は体型の変化や筋力の衰えなどで、家事作業が少しずつ苦痛になっていたようです。
その中でも具体的に言えば家具の配置やテーブルの高さ、キッチンでの作業導線など、ちょっとしたことでストレスになったりしていました。
 
 
そんな時に追い打ちをかけるような今回の骨折で、キッチンの使い勝手が益々悪くなってしまいました。
退院時は骨折の痛みは軽減されたものの、重くて硬いコルセットを装着したままの生活で、以前にも増して体を曲げたりねじったりが出来なくなったためでした。

 

 

まずはヒアリングして思考の整理から

キッチン導線の見直しに当たり、まず最初に始めたことは母へのヒアリングからです。滞在中は主に私がキッチンを占領しますが、普段実家のキッチンを使う主役は、あくまでも母だからです。

使う本人の気持ちに寄り添いながら【思考の整理】から作業を進めて行くのがオーガナイズの基本。

なので、いくら母娘でも勝手にモノを処分したり配置換えをすることはしません。

 

当時のキッチンの現状、作業導線の課題は

 

 

 

①キッチンカウンターテーブルの下

実家では食器収納の場所は2か所ありました。
30年前に設置したカウンターテーブルの中をメインの食器棚として使用しています。
 
ただテーブル下の80cm以下の場所にある食器を、かがんだ姿勢で出し入れするのはコルセットをしていなくても面倒な作業でした。しかも出し入れが面倒なため、昔愛用していた食器が今にも雪崩が起きそうに積み重なっていましたあせる

②少し離れた場所の木製カップボード

シンクから少し離れた場所にあるカップボードはスリムですが、普段あまり使用しない家中のグラス類やコーヒーカップ類、そして日本茶の急須や湯飲みなどがたくさん収納してありました。
 

母へのヒアリングからまとめた問題点とは?

 
◆使わない食器が多く出し入れがしにくい
◆使う食器も昔の良いものだが重く取り回しがしにくい
◆今あるものは思い出のあるものなので捨てられない
◆腰をかがめるのが苦痛なので下の方のモノが使いづらい
◆使う食器が分散していて効率が悪い
 
予想通りの返答でしたが、昔は平気だった動作もやはり今は足腰の弱さがネックになっていました。
そのため料理をすること全般が億劫になっている様子です。
 
 

改めて今回のオーガナイズの目的は

【身体機能の衰えに応じた導線で作業の負担を軽くする】こと

実は実家のキッチンを片付けたのは今回が初めてではありません。

タイミングが良い時に少しずつ不要なキッチングッズや食器を処分したりと、段階を踏んで整理を手伝ってきました。
 
ただ基本的な食器棚やレンジボードなどの配置を変えるなど少し大掛かりなチェンジはして来なかったのです。
なぜなら、使い慣れた配置の大幅な変更は、高齢の母にとっては気持ちがついていかず逆にストレスになるからです。
以前の習慣を一気には変えられず、生活環境の急激な変化に慣れるまでしばらく混乱するようです。
 
なので、今回も少しずつ、優先順位をつけながら、そして母自身の意向を確認しながら段階を分けて作業することにしました。
 
 

 

 

母が使いやすいキッチンの最終ゴールは次の2つ

◆食器を軽量食器に変更

普段使用するメインの食器を、思い切って軽くてデザインが豊富なニトリの【カル・エクレシリーズ】に変えました。
 最初はたくさん食器があるのにわざわざ新しく購入しなくても良いと言っていましたが、いざ使ってみるとその軽い使い勝手が気に入ったらしくまた久しぶりに新調した食器のデザインが新鮮で料理をする意欲にもつながったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
何より手首への負担が軽くなり食器洗いや、食器棚からの出し入れの負担が少なくなりました。
 

◆食器棚を使用しやすい配置に変更

少し離れた位置の木製カップボードを普段使いの食器専用棚に変更し、更にシンクのすぐ近くに設置しました。

食器を「出して使う⇒洗う⇒しまう」このデイリーの家事の流れ作業が、出来るだけ体の負担が少なく済むように導線を見直しました。この家事導線が最短距離で流れるため、無駄な距離を歩くことなくストレスが減り本人にも満足してもらえました。
 
特に毎日使う食器は母の身長に合わせて、母のゴールデンゾーンに配置しました。
 
立ったままでも出し入れがしやすく、食事に必要な道具がすべて目の前にスタンバイしている状態に整えて、小引き出しにはこれも母が普段使用するだけのカトラリーや小物を納めました。
 
お客用の湯飲みやコーヒーカップ、グラスなどは、カップボードの上段の少し手を伸ばせば腰をかがめずに出し入れできる場所にも最低限だけ収納しています。
 
基本的に家族が訪問した時には必要な食器類はその都度カウンターテーブルから出し入れするので普段は問題ありません。
 

 

 

自分で台所仕事が出来ることが母の生活の励みになった

今回の実家のキッチンオーガナイズを実施した結果、主に次のようなメリットがありました。

 

◆台所仕事をする母の足腰の負担が格段に減り、転倒のリスクも抑えられるようになった事。

◆母が身体の負担なく動ける安心感で趣味の料理を楽しむモチベーションが上がり、生活の質が格段に上がった事。

◆気軽にお茶の用意が出来る事が自信や意欲にもつながり、人を招く事が億劫にならず積極的に交流することが出来て「フレイル」の予防となった事。

 

※フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指します。(出典:厚生労働省)

 

母の介護度が要介護1から要支援2に改善

そして何より一番の大きな収穫は、一年後の母の介護度が要介護1から要支援2に改善された事です。

実はこれには正直、ケアマネさんも家族も驚いていました。

現在は当の本人は常時必要なはずの杖を玄関脇や、ソファの横に置いたまま歩くことも増えました。
 
正に「杖忘れの湯」ならず、「杖忘れのオーガナイズ」と冗談で言って笑っています爆  笑
 

高齢者が穏やかに自分らしく健やかに余生を送るためには、定期的な暮らしの軌道修正が必要になる時があります。

暮らしに対する見直しを柔軟に取り入れる事が、人生100年時代の老後を楽しむエネルギーに変わることを確信した出来事でした。

 

「もっと楽に、もっと生きやすく」

 

暮らしを定期的に見直す事のメリットは、決して本人のためだけではなく、周囲の家族や友人にとっても嬉しい生活の変化となり得ます。

今後も娘として、高齢の母がQOLをキープしながら余生を過ごすために、暮らしの最適化を行いながらサポートを続けて行きたいと思っています。

 

 

「シニアが無理なく動けるキッチンの仕組みづくり」についてはいかがでしたか?

皆さんが暮らしを安全に気持ちよく過ごすためのヒントになれば嬉しく思います。