「明日って暇?」

「...うん。」

「ふーん。」

「聞いててそれ?」

「ダメ?」

「別に。」

自分から聞いてて反応薄かったのが悪いのだけれど、なんだか不服そうな表情を見せる彼女

「どこか行く?」

「誘ってくれるなら。」

「じゃあ、お家に一緒にいる。」

「ふーん。」

「出掛けたい気分なら誘うけど。」

「どっちでもいい。」

「へぇ。」

相変わらず素直じゃないと思いながら、スマホで予約していたお店の時間を確認する

「もう寝る?」

「うん。」

「じゃあ、一緒に行こ?」

「うん。」

そうして、明日のことを考えながら眠りについた










朝、目が覚めると、隣ではまだかわいい寝顔を見せてくれる彼女がいた

今日は彼女にとって特別な日だ

だけど、きっと今年も彼女はそのことを忘れているだろうと思う

そんなことを考えつつスマホを見ると、いろんな人からメッセージが来ていた

(彼女さんおめでとう!)

(ちゃんとお祝いしてあげるんだよ?)

(イチャイチャしすぎんなよ!)

(素敵な1日にしてねー。)

私の方にもメッセージが来るとは思っていなくて、驚いたけれど、メッセージの内容に笑いを必死で堪えた

今日はどうやって彼女を祝おうか未だに悩んでいる

盛大にやりすぎてもお互いに疲れる
だけど、こじんまりしすぎても、お祝いしたい気持ちを表しきれない

絶妙なバランスが難しい


「...んん......」

「......ん?」

「...ん...おはよ...」

「おはよう。」

「...ハグ。」

「する?」

「する。」

彼女が自分から言うなんて珍しすぎて、戸惑いつつ言われた通りに抱きしめる

「チューも。」

「え?」

「はやく。」

「はい。」

こんなに素直なことがいままでにあっただろうか...


夢かと思うけれど、彼女の温もりが伝わってくるということは現実

よく彼女のことを見てみると、ちょっと寝惚けているようだった

なんだか少しだけほっとした自分と、甘えてもらえて嬉しい自分がいた


「友梨奈。」

「んん...」

「おはよう。」

「…眠い...」

「まだ寝てる。」

「そっか。」

「理佐、隣にいて。」

「いいよ。」

「うん。」

愛おしすぎて、ずっと抱きしめていたいし、頭を優しく撫でていたいし、顔をじっと見つめていたいと思う

でも、彼女は恥ずかしがって付き合ってはくれないだろうから、心の中で衝動をぐっと堪える


「さっきスマホ見たら、みんなからおめでとうって来てたんだよね。」

「どうかしたの?」

「みんな、てちおめでとうだって。」

「ん?......あー、そっか。」

「うん。」

「ねぇ。」

「ん?」

「理佐は?」

「え?」

「理佐は言ってくれないの?」

「......ふふっ。言って欲しい?」

「...言ってくれないならいい。」

そう言って、彼女は私の方を背にして反対の方を見てしまった

「友梨奈...生まれてきてくれてありがとう。」

「......。」

「ずっとずっと大好き。これからも一緒にいて欲しいなぁ。」

「...ずっといる。」

彼女は私の方に向き直して、ぽつりとそう言ってくれた

「ありがとう。」

「ん。」

今日は、誕生日からか素直に甘えてきてくれる彼女

とっても嬉しいし、せっかくだからとことん甘えさせたいと思った


「友梨奈。」

「ん?」

「今日、友梨奈が行きたいところに一緒に行きたいなぁ。」

「ねずみさんがいる遊園地。」

「ふふっ。じゃあ行こっか!」


彼女は、よく無理をする

自分の中でのストッパーがないから、とことんやると決めたら体がボロボロになろうが心がボロボロになろうがやり切ろうとする

それが、私にとっては尊敬するところでもあり、心配して守りきりたいと思うところでもあった

きっと、彼女のそういう部分は変わらないだろう

でも...だからこそ、私が彼女のそばに居続けて支えていきたいと強く願っている


そして...





「理佐ー!」

「んー?」

「大好きだよー!」

「私もー!」

笑った表情をずっと守り切りたいと、自分の中で揺るぎないものとして決めているんだ...















友梨奈。お誕生日おめでとう。
来年は一緒にお酒が飲めるようになるね。
着実に大人の階段を登っている友梨奈だけれども、いくつになっても、私には甘えてきて欲しいと思ってる。

そして、願わくば、友梨奈の隣でずっと笑っていたい。
友梨奈の隣で友梨奈と笑い合える権利を私にください。





恥ずかしいから、後で一緒に行くお店で店員さんに、この内容を書いた手紙を渡してもらうようにお願いをしよう





来年も再来年もずっとずっと彼女と一緒に笑い合えますように...
そして、彼女が彼女らしく元気に過ごしていけますように...