「一緒にバスケしようよ!」

私たちが出会って初めての言葉がこれだった

「ムリだよ...」

私の前に手を差し伸べて優しさに溢れている笑顔で言ってくれたのに、私はそれを拒むことしかできなかった

「なんで...」

「自分にはなにもできないし...」

「そんなことないよ。」

「みんな、初めはなにもできないよ。」

「なにもできないって思うのは構わないけど、それでなにもしない理由にはならないよ?」

「...っ......」

そうだ...
自分にはなにもできないと思ってたから、なにもしてこなかった

「もう1回聞くね。」

「......。」

「一緒にバスケしようよ!」










「スティール!」


※スティール·····ディフェンスがオフェンスからボールを奪うこと


「早く戻れ!」

「アウトナンバー!」


※アウトナンバー·····オフェンスがディフェンスよりも多い状況でオフェンスにとっては有利となる


ゴールにボールが吸い込まれるかのように入った

「ナイッシュー!」

ピーーーーー

タイムアップの合図が鳴りゲームが終了する

「うっわ...」

「またかよ...」

「友梨奈、最後ナイスプレーだった。」

「理佐もフォローありがと。シュートナイス。」

「てちと理佐を同じチームにしたらダメだって...」

「「なんで?」」

「いや、攻撃強すぎ。敵チームになりたくない。」

「でも、茜と愛佳も一緒にされると嫌なんだけど。」

「あたり強すぎて怖い。」

「てち。」

「ん?由依、ナイスファイト。」

「うん。最後の速攻の前なんだけど...」

「あ、ごめん。」

「いや、こっちも悪かったんだけど、もうちょっとギリギリじゃないとスクリーンかからないかもしれないから。」


※スクリーン·····相手プレイヤー(主にディフェンス)と過度の接触を起こすことなく、相手プレイヤーの希望する場所への動きを、遅らせたり範囲を制限したりする正当なプレー


大会が近くなり、練習に対する熱がさらに強くなっていた

(集合。)

顧問から集合の合図があり、全員が顧問を囲むように集まる

(大会も目前に迫っている。いまのところ、誰も怪我してないのは幸いだと思う。)

誰もが集中して話を聞いている

(一応、試合のスタメンを言っておこうと思う。)

『はい。』

(呼ばれた人は返事をして、空いてるスペースに移動して。)

『はい。』

この時間が1番好きじゃない

スタメンを発表することによって、大会までの練習が変わってくるから大切だというのは分かっている

だから、仕方ないとも思う

(1人目。PG、小林。)

「はい。」

(2人目。SG、渡邉。)

「はい。」

(3人目。SF、平手。)

「...はい...」

(4人目。PF、志田。)

「はーい...」

(5人目。C、守屋。)

「はい!」

(この5人の予定だからよろしく。)

『はい。』

スタメンが発表されたことでやはり練習が余計引き締まった

「友梨奈!後ろ。」

「OK。」

「リバウンド!」

「愛佳、こっち。」

「ほい。」


緊張感があるものの、ピリピリし過ぎずに練習が進んでいた...





「明日から大会だけど、私たちが狙っているのは全国優勝なので、ここで苦戦することなく暴れて行きましょう!」

『おーー!』

大会前最後の練習が終わり解散となった

「理佐。」

「ん?あ、友梨奈。」

「お疲れ。」

「お疲れ。」

「緊張してる?」

「してない。」

「さすが。」

「シューティングして帰る?」

「うーん...理佐はしていくでしょ?」

「まぁ...」

「見てる。」

「帰らないの?」

「理佐と帰る。」

「何時になるか分からないよ?」

「いや、明日大会だからセーブして。」

「ふっ...」

「笑うなよ。」

「ごめん。」

「別にいい。」

シューティングをしている理佐の姿をぼーっと眺めている友梨奈

「友梨奈。」

「なに?」

「小学校の時のこと...覚えてる?」

「いつ?」

ふと、理佐が友梨奈に過去のことを訊いた

「初めて会った時...」

「忘れるわけないじゃん。」

「あの頃はこんな状況になるなんて思ってなかったよね。」

「理佐が声掛けてくれなかったらバスケ自体やってないし...」

「あの頃の友梨奈、ずっといじめられてたけど、どうやったら解決できるんだろうって考えてて...」

「あー...いじめられてたね。」

「いじめられてたからずっと1人でいて...でも、ずっと友梨奈に話し掛けてみたかったんだ。」

「え?そうなの?」

理佐の発言で驚きを隠せない友梨奈
友梨奈の反応を見て、理佐は不思議に感じていた

「うん。あれ?言ってなかったっけ?」

「聞いたことないよ。」

「1人じゃ絶対に声掛けれないって思って、みんなに相談したら、バスケ誘えば?って言ってくれて...」

「みんなって...由依、愛佳、茜?」

「そうそう...あの時いた3人。」

理佐が声を掛けたあの日、友梨奈はいじめられていて泣いていた
そんな時に、理佐を含めた4人がいじめている奴らを追い払ったのだ

「あの時は本当に助けられた。」

「助けた覚えはないよ。ただ、声をかけたかっただけだし...バスケしたいのに4人しかいなかったんだから。」

「そういえば...私が始めた時にちょうど5人になったんだよね。まじでびっくりしたよ。」

「あははっ。ちょうど1人やめちゃって...」

「うん。でも、始めた時は知らないから焦ったよ。」

「まぁ...友梨奈の上達の早さには1番驚いたけどね。」

「いやいや...」

「本当だって!」

「みんなが上手かったからだって...」

「多分、いま1番上手いの友梨奈だよ?」

「おかしいって。私は理佐だと思ってる。」

「んなわけない。」

「それより...早く終わらせてよ。」

「じゃ、あと1本3P入れたらね。」

「1発で決めろ。」

「怖いなぁ。」

「できるくせに。」

「当たり前じゃん。伊達にSGしてないって。」

スパッ

「理佐のシュートっていつもいい音するから好きなんだよね。」

「それはありがとう。」

「...あのさ...」

ふと、友梨奈が俯きながら呟いた

「ん?」

「これからもずっとみんなとバスケしたい...」

「...できるよ。」

「でも...」

「みんなちゃんと考えてるよ。それでも、みんなバスケが好きだから...友梨奈と一緒で。」

「理佐...」

「でも、その為にはやっぱり大会で勝ち続けなきゃじゃん。」

「そうだね。」

「多分...いや、絶対に勝ち取れるってなって思ってる。」

「私も!」

そんな会話をしていると遠くから声が聞こえた

「おーい!」

「いつまでやってんの!」

「早く帰るよ!」

「「はーい。」」

5人でバスケを始めてからずっと一緒にいる
ケンカしたりふざけたり...

思い出が沢山ある
多分、これからも思い出が作られていくのだろう










「写真撮ろ!」

「OK。」

「てち、真ん中。」

「やだよ。」

「いいから!」

友梨奈の両手には優勝カップ
理佐の両手には優勝とMVPの賞状が握られていた...










数年後_____


「逆サイド!」

「プレス!」

「ダブルチーム!」


※ダブルチーム·····ボール保持者を2人のディフェンスで挟んだり囲んだりしてミスを誘う守備


「ナイスプレー。」

「オールコートマンツーとかキツイんですけど...」


※オールコートマンツー·····相手のオフェンスに対して、常にマンツーマンでディフェンスを行いプレッシャーをかける激しいプレー方法


「愛佳、やりたくないならいいんだよ?」

「茜、怖いって...」

「じゃ、ちゃんとやろうね。」

「はい。」

「由依。」

「ん?」

「さっきのもうちょっと前にパスしてくれると助かる。」

「OK。」

「疲れた。」

「てちお疲れ。」

「ありがとう由依。」

「愛佳。」

「てち、どうした?」

「さっきのリバウンド取ってくれたの助かった。」

「あれ、取るの難しかった...」

「あの後、茜がシュート決めてくれたのは大きかったよね。」

「理佐に褒められると嬉しい。」

「あ、デレてる。」

「ずるい...」

「由依?」

「...疲れたからこの後、ご飯行かない?」

「あ、いいね!」

「焼肉がいい!」

「わぁ...それいい!」

「お腹すいてきた。」

同じ目標に向かう仲間がいるからこそ、辛いことや苦しいことがあっても自分を奮い立たせて進むことができる

きれいごとにも思うかもしれない

だけど、気にかけてくれていつも傍にいてくれるこの人たちがいるから私は笑えるんだ...





バスケットボールのポジション

※PG·····ポイントガード。いわゆる司令塔で、冷静に判断しゲームを組み立てるポジション

※SG·····シューティングガード。3Pシュートなど外側からゴールを狙えるシュート力を持った人がなるポジション

※SF·····スモールフォワード。走・攻・守全てをこなせるオールラウンダー的な人がなるポジション

※PF·····パワーフォワード。外から中、中から外へパスを回したり、直接中から攻撃したりするポジション

※C·····センター。チームの精神的支柱の役割で、パワーがありリバウンドやゴール下の勝負をするポジション