アルディージャ戦を観戦した試合の中で、記憶に残っている試合を当時の視点から振り返る。

2013年5月6日(月・祝)
NACK5スタジアム大宮
大宮アルディージャサンフレッチェ広島
15時キックオフ
大宮2-1広島

サッカー観戦した試合の中で、
生きている限り忘れられない試合はこの試合である。
母と兄の3人で観戦していた。前年チャンピオンチームとの対戦だけでなく、ゴールデンウィーク最終日ということもあり、満員の観衆で埋まった。2010年からNACK5スタジアムで観戦しているが、さいたまダービー以外では一番の観客動員だと思った。
大宮のスタメンは前節と変わらずだったが、広島のスタメンは、GKが西川周作ではなく、リーグ戦初出場の増田卓也が起用された。増田にとって忘れられないデビュー戦になるなんて本人ですら思わなかっただろう。

試合は前半を0-0で終えた。当時大宮アルディージャは前年から20試合連続無敗記録を更新していた。前年チャンピオンチームの広島とも互角に戦っている印象を受けた。私の心の中に、このサンフレッチェ広島戦で無敗記録を止められるのではないかと感じるものがあった。だから前半をスコアレスで進めたことは上出来だと感じた。

後半も試合が動かなかったが、67分に大宮・ノヴァコビッチがゴールを決めて大宮が先制した。75分にズラタンから富山貴光に交代した。しかし、広島も77分に佐藤寿人がゴールを決めて同点に追い付く。訳がわからずに失点した印象だ。気がついたら佐藤寿人がボールに触れてゴールを決めたような感覚だった。試合はそのままドローで終えると思った。忘れられない出来事がこの後起きた。

84分、大宮・GK北野貴之のフィードキックから、広島・水本がGK増田にバックパスした。処理がうまくいかなかったところに、大宮・富山がヘディングシュート。そのときに富山と増田が激突した。二人とも倒れた。ボールはそのままゴールポストに入り、大宮が2-1と勝ち越した。

ゴールを決めた瞬間に思わずガッツポーズをしたが、すぐに止めた。倒れた二人が動かなかったからだ。歓喜は全くなくスタジアムがしーんと静まり返る。選手達は倒れた二人を心配して見ている。22分間中断した。担架要員も駆けつけるが、二人とも動かない。その段階で救急車を呼んだだろう。広島・森保一監督が叫んだ。

「誰か救急車を呼べよ!」

その後だろうか、大宮アルディージャサポーターを中心にスタジアムの観客全員で、

増田!  増田!  増田!

と叫び、

サンフレッチェ広島サポーターも中心になってスタジアムの観客全員で、

富山!  富山!  富山!

と叫んだ。

ここまで来ると、敵味方なんて関係ない。敵味方を超えて、純粋なサッカーファンとして二人の無事を祈った。まさにスタジアムがひとつになった瞬間だった。

さらにその後、救急車がピッチに入ってきた。野球場ですら担架しか来ないのに、救急車がピッチに入ってきたことに驚きを感じた。

また、試合が再開した後、にわか雨が降ってきたので、私達は慌ててスタジアムを後にした。実は最後までは観ていないのだ。その後は、広島のGKが原裕太郎に代わり、大宮の富山から片岡洋介に代わった。試合が終わり、大宮がそのまま逃げ切った。にわか雨も上がり、両チームのファン・サポーターにとっては清々しい雨上がりだっただろう。両チームの選手達が相手チームのファン・サポーターに挨拶をした。こんな光景初めて見た。
Jリーグ観戦して良かったと心から感じたシーンだった。応援するチームが違うだけで、みんなサッカーを楽しみたい人達がスタジアム観戦するんだ。忘れかけていた何かを呼び起こしてくれた気がした。だから4年経った今でも忘れられないのだろう。

その後。
広島・増田は2017年に長崎へ期限付き移籍した。長崎ではレギュラーとして頑張っている。大宮・富山は2016年にサガン鳥栖へ移籍した。セットプレーのキッカーとして必要不可欠な存在になっている。
この二人の未来が明るいものとなってほしいと願わずにはいられない。
また、大宮アルディージャは次節のベガルタ仙台戦に敗れて21試合連続無敗記録で止まった。さらに7月10日まではわずか1敗で首位に立ったが、残り19試合を3勝16敗で12位で終えた。2013年は浮き沈みが激しかったことも忘れられないのだ。

広島・増田と大宮・富山の激突シーン。富山のゴールは決まったが、激突した二人は倒れて動けなくなった。

選手達が、倒れた二人を心配して見ている。

ついにピッチに救急車2台が入った。それぞれの救急車で運ばれた。試合は22分中断した。

広島・原裕太郎。4年ぶりのリーグ戦出場となった。

大宮アルディージャサポーターに挨拶をするサンフレッチェ広島の選手達。一方で、大宮アルディージャの選手達はサンフレッチェ広島サポーターに挨拶をした。