G7会合で国際課税の議論まとまる。 | 後藤茂之オフィシャルブログ「PEOPLE FIRST!」Powered by Ameba

G7会合で国際課税の議論まとまる。

1.これまでG20/OECD BEPS包摂的枠組み(注)において、①経済のグローバル化とデジタル化に伴う課税上の課題への対応(市場国への新たな課税権の配分)、②グローバル・ミニマム課税の導入(所得合算ルール)を目指した議論を日本が主導的役割を果たす中で進めてきました。6月5日、ロンドンで開かれたG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、

  ①第1の柱大規模で高利益の多国籍企業(ex.プラットフォーマー等)について10%の利益率を上回る利益のうち少なくとも20%に対する課税権を市場国に与える、課税権の配分に関する公平な解決策に至ること。あわせてデジタルサービス税の廃止等適切な調整を行うこと。

  ②第2の柱:国際的法人税引き下げ競争に歯止めをかけるため、軽課税国に所在する子会社等に帰属する所得について、親会社等の所在する国・地域において、国際的に合意された最低税率(15%以上)の所得合算課税グローバル・ミニマム課税】を行うこと。

  に各国がコミットする合意が成立しました。

  (注)BEPS:Base Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転)

 

2.これまでの交渉の過程では、数値の議論を巡ってアメリカが第2の柱について当初は21%(cf.バイデンの合算課税【GILTI税率】の引上げ案が13.125%→21%(案))を提示してより重要視していたのに対し、デジタルプラットフォーマー(GAFA等)の売上についてデジタルサービス税を一方的に採用し第1の柱をより重要視していたイギリスなどが「第2の柱」の決着をするには「第1の柱」との同時セットを強く主張しました。一方で国際的合意とするためにはアイルランド(法人税率12.5%)、シンガポール(法人税率17%)などの軽課税国の反対(中国はやや慎重な立場)も勘案して、米国が5月22日のOECDの会合で「最低でも15%以上」とする最低税率を示していたことを受け、今回初めての「第1の柱」「第2の柱」同時の具体的数字入りの決定となりました。

 

3.デジタルサービス税その他の関連する類似の税制の廃止については、アメリカは合意が成立したらすぐに廃止、イギリスは第1の柱がきちんと実施されてからの廃止を主張して今後適切な調整を行うこととされています。第1の柱の「課税対象【scope】」についてはグローバル企業(100社程度)に限定することで各国の支持が得られています。この米国提案では米国企業が概ね半分程度を占め、対象となる日本企業は限定的となる見込みです。

 

具体的な数字入りで、G7の合意が成立したことは大変大きな成果であり、7月のG20において2つの柱について並行して合意に至ることが大きく期待されます。