経済安全保障の視点からのサプライチェーンの見直し。 | 後藤茂之オフィシャルブログ「PEOPLE FIRST!」Powered by Ameba

経済安全保障の視点からのサプライチェーンの見直し。

1.米国では、下院の諜報委員会においてファーウェイに関してペンタゴンの通信機器に外部から侵入しやすくするバックドア(裏口)が仕掛けられていると指摘されたことを端緒とし、ファーウェイ、ZTE等機器の政府調達を禁止する国防授権法(2019年度)、安全で信頼できる通信ネットワーク法(2020年)、BIS(商務省産業安全保障局)によるファーウェイ及び関連会社向け半導体輸出規制強化(2020年5月発表)

 

【注】等サプライチェーン・セキュリティの強化を図る動きが加速化しています。昨年には、米国は『GTN(Global Trusted Network)』の構築を目指して日欧にも歩調を合わせるよう求めてきています。

【注】米国企業からの売却だけではなく域外適用されてアメリカ由来の製造装置、製品を中国に売れなくなるため、日本、ヨーロッパ、韓国等にも大きな影響が出る

 

2.日本にとって、中国は輸出入の3割を占める隣国(『特別な隣人』)であり、経済界も「アメリカ市場か中国市場か」ではなく、「アメリカ市場も中国市場も」という希望を持つ中、日本においても機微技術のサプライチェーンから中国を外す中国デカップリング政策が検討されています。一方、対外的に経済をテコに地政学的国益を追求(エコノミックステイトクラフト)し、対内的には国家による国民監視システムと民間の国民データを一体的連携させている中国と、自由、人権といった共通の価値観によるルールベースは折り合いがつくのかという疑問も提起されています。

 

3.我が国では昨年、サイバー攻撃や先端技術漏洩等安全保障上のリスクへの対応と国内ベンダーの育成を図るために、特定高度情報通信システム等の普及に関する法律を制定し、予算【研究開発支援のために元年度補正予算で1,100億円(基金方式)を計上。】、税制【5G情報通信インフラ税制の創設。】、金融の支援を行ういわば日本方式とも呼べる対応も行っています。

 

4.本年4月、日本でもNSS(国家安全保障局)に経済班が発足しました。アメリカでは、NSC(国家安全保障会議)とは別に、NEC(国家経済会議)が設置されており、いわば『日本版NEC』ともいえるものです。①輸出管理、対日直接投資規制による情報流通防止・技術保全、②サイバー防衛、③サプライチェーンの分散化、④経済安全保障における国際協調、⑤デジタル通貨等緊張感高まる国際環境の中で、しっかりとした国家戦略に基づく対応が不可欠です。