CS放送で、ちょっと前に放送されて録画しておいた、松本清張原作のドラマ「支払い過ぎた縁談」をみました。

 

松本清張はかなり読んでいますが、こちらは未読・・・珍しい。

 

さて、以下、ネタバレありのレビューです。

 

地方の旧家、萱野家は、昔は立派なお金持ちだったが、いまは当主の道楽で借金まみれ。いろんな肩書はあれども、実は貯金はなく、見栄で生きているのが実情。

 

当主の徳右衛門(若山富三郎)は男やもめだが、お手伝いの房子(木内みどり)を愛人にしている。

彼には一人娘、幸子(名取裕子)がいるが、29才にして未婚の、昭和の当時でいく「行き遅れ」になってしまっている。幸子はとても美人だが、父親がお見合いの話を断ってしまう始末だ。

 

ある日、萱野家に強盗が入り、唯一の家宝である壺を盗まれそうになるが、なんとか撃退。それが地元の新聞に大きく掲載され、徳右衛門は大満足。

 

最早この壺だけが萱野家の財産なのだ。

 

ある日、高森という、東京の大学の助教授(大和田獏)が、古文書を見せてほしいと突然訪ねてくる。珍しく実直な青年に、徳右衛門は好感触。幸子の結婚相手にどうかと画策する。

 

冴えない男だが、結婚相手としては無難ではないかと、幸子も乗り気になり、徳右衛門の媚薬をお酒に忍ばせ、幸子と高森は関係を結ぶ。

 

翌日、高森は逃げるように東京へ戻り、幸子は傷つくが、数日後に叔父を連れて再びやってくる。正式な結婚の申し込みを受け、二人は婚約することになる。

 

そんな折、幸子の運転する車が故障し、通りがかりのイケメン、名高達夫がそれを助ける。高森とは別格のイケメンに心奪われてしまう、なかなか軽薄な幸子。

 

桃川というその男は、東京の資産家の息子で、元は萱野家のものであったお城の再建を援助したいと申し出る。さらには、幸子を結婚相手にと考えている様子。

 

徳右衛門は、高森という婚約者がいるので断ろうとするが、幸子はすっかり桃川に心変わりしてしまう。

 

父娘で東京の桃川家を訪れ、改めて膨大な資産を目にして、結婚するならこの男だ!と決め、高森には急に冷たくあしらい、結婚の話はなかったことにしてしまう。

 

それに激怒した高森の叔父が怒鳴り込んできて、慰謝料をよこせと要求する。その額2000万円。応じられなければ裁判を起こすと脅す。裁判になれば幸子も恥をかくことになり、家名にも傷がつくが、そんなお金は萱野家にはない。

仕方なく、家宝の壺を手放す。

これから桃川と結婚し、莫大な財産が手に入るのだから、これくらいいいだろう・・・と目論んで。

 

桃川との結納の日がやってくるが、桃川家の人は一向に訪れない。電話をしても繋がらず、怪しんだ幸子は東京の桃川家を訪ねるが、全く別の人が暮らしていた。

 

その日、桃川家で主の女性のふりをしていたのはおそらく、お手伝いの女性だと、本物の桃川家の奥様は言った。さらに、高森の叔父を名乗った弁護士も、別人であることが判明した。

 

つまり・・・すべてがグルで、結婚詐欺に遭ったのだ。

最初から、あの壺が目当てで、高森も桃川もそれぞれの役割を担って幸子に近づき、父娘ごと騙したのだった。

 

呆然とする父娘だが、ショックから立ち直った幸子は、今度は、別の壺を本物に見立てて、美術展に出品する。そこで、将来の旦那様を見つける為に・・・。

 

という感じです。

 

30才で行き遅れ、というのが昭和ですね。

名取裕子のお嬢さんぷりと、若山富三郎の、いかにもお金持ちの女好きなおじさん、という組み合わせがとても良かったです。

 

若山富三郎はかっこいいなー。強欲なエロ爺を好演してました。

 

桃川は胡散臭いなーと思って見てましたが、高森も最初からグルだったのね。

冒頭の「壺」が、最後の詐欺への伏線となっていたわけです。このあたりが松本清張ぽく、面白い。

誰も死なないし、サスペンスというよりも小噺ぽいストーリーでした。

 

名高達男がめちゃくちゃかっこいいのよー。あれは騙されるわ。

そういえば自分も、小学生くらいの頃、「名高達男かっこいいよね」と母に言って「あんた好みが渋すぎるわよ」と言われたのを思い出しました。

 

若山富三郎が、高森を幸子に薦める際に「塩辛」」を例えるくだりが面白かったです。

二人で並んで晩酌している時に、若山富三郎は、幸子の飯台に塩辛を置きます。

「私塩辛嫌い」

「お前は食わず嫌いなんだよ。食べてみな」

といって、薦めるんですが、この塩辛は高森を指してるんですね。

 

幸子は、最初は気が進まないものの、まあ試してみるかと塩辛を食べます。

 

しめしめ、と思った若山富三郎は、幸子に、とっておきの「媚薬」を渡し「これを高森に飲ませてお前から誘え」と、父親がなんちゅうこというんだ!ってことをそそのかします。

 

しかし、年齢的に、もう後がない幸子は、その媚薬を酒に混ぜて高森を泊めている離れを訪ね、酒を飲ませます。返杯され、自分も飲むことになって、そのまま・・・となってしまうふたり。

 

ベタなんですが、部屋の電気が落ちるのをみて、若山富三郎は、複雑な気持ちになっちゃうんですね。自分がそそのかしたくせに。

 

ちなみに、この媚薬は、ただの片栗粉を合わせたもので、そんな成分はまったくなかった、というオチなのでした。

 

なにかと昭和な要素の多いドラマで、昭和生まれとしては十分楽しめました。

 

幸子はその後、富豪と結婚することはできたのか・・・。

 

強欲なお手伝いさん、房子は若山富三郎はと結婚できたのか・・。

 

原作を読んでみたいなーと思いました。どの短編集に入っているのかしら。