宮部みゆきさんの『理由』を読みました。この本の出版は1998年で、発売当時単行本で買いました。今頃読むということは25年以上積読だったことになります。宮部さんは本作で直木賞を受賞しているので、宮部さんの傑作群の中でも代表作の一つと言えそうです。

 

 土砂降りの夜、東京・荒川区の高層マンションから転落死が発生。調査するとその部屋の一家四人が惨殺されていた。その部屋を借りていたのは小糸一家。しかし、実際そこに住んでいたのは砂川家。その部屋は競売にかけられていた。殺された4人は誰なのか?この出来事を、マンションの住人、管理人らの供述、小糸家、砂川家の周囲の人々の供述などから構成した、ドキュメンタリー・タッチの作品です。

 

 宮部さんの作品をそれほど読んでいるわけではないのですが、『火車』に近いイメージです。バブルがはじけて数年たった時代を背景としており、その時代背景が重要であるようです。つまり社会問題を取り込んだ社会派ミステリと言えます。

 

 文章は硬質で淡々としています。長い小説で、少々長すぎる気もしますが、ひじょうに重厚な大人のミステリという印象を受けました。私は不動産業界に疎いので勉強にもなりました。おそらく綿密な取材に基づいていると思いますが、そのあたりの知識がない人間にもわかりやすいように、不動産の競売に関することなどの基本的な知識の解説も含まれています。