先日、作曲家の大野雄二さんの訃報が流れました。ジャズ・ピアニストということですが、その分野の仕事は知りません。アニメ・ルパン3世の音楽などでも知られていますが、私にとって大野さんは映画『犬神家の一族』の人です。同じく大野さんが音楽を手掛けている映画『人間の証明』を改めて観てみました。『犬神家』に続く角川映画第二段です。
原作は森村誠一さんの推理小説で、著者の代表作です。私も読んだことはあるのですが、昔のこと過ぎて内容はあまり覚えていません。今回、映画を見直してみて、戦後日本の問題を扱った作品として、松本清張の『ゼロの焦点』に近いメッセージ性をもった作品だと思いました。
東京のホテルのエレベーター内で黒人青年が殺害される。死に際の遺したダイイング・メッセージを頼りに、警察は彼のふるさと・ニューヨークに赴く、というストーリーです。
ダイイング・メッセージを言語学的に考察する点は『砂の器』を想起させます。とはいえ、謎解き要素は強いとは言えず、タイトルが示すように、人間性の問題、とりわけ親子の関係を描くことが主眼の作品です。主演は岡田茉莉子さんと松田優作さんです。松田さんが演じる刑事は、こんな刑事いないだろう、と思いつつも、やはりかっこいいです。(とはいえ、『蘇る金狼』や『野獣死すべし』といった大藪晴彦作品の方が松田さんには合っていると思います。)昭和20年代を舞台とした『犬神家』と比べると、全体的に昭和を感じさせる内容ですが、それは私が昭和20年代を知らず、本作が作られた70年代生まれだからかもしれません。
大野さんの音楽について言えば、殺害される男性を演じるジョー山中さんが歌う「人間の証明のテーマ」が実にいいです。これは本編中にも登場する西條八十の詩を角川春樹が英訳したものだそうです。(なお、ジョー山中さんと言えば、なんといってもFlower Traveling Bandです。ロック好きを自称しておきながら不覚にも私は知らなかったのですが、20年ほど前、カナダ人の友人に勧められて初めて聴きました。このバンドはカナダでも人気があったそうです。)『犬神』の音楽は日本的な音楽でしたが、『人間の証明』は全体的に洋風で、大野さんの引き出しの広さを感じました。
