コードウェイナー・スミス著『人類補完機構 ノーストリリア』を読みました。SFファンを自称しているくせに、このSFの名作をこれまで未読でした。

 

 スミスは寡作ながら評価の高いアメリカの作家です。本書はスミス唯一の長編で、のこりは短編ですが、すべて「人類補完機構」シリーズに属する作品のようです。全体で壮大なシリーズになるというわけです。

 

 タイトルのノーストリリアは銀河で最も豊かな惑星。そこに住む少年ロッドが主人公。彼が地球を買い取る、という話です。そして、ロッドは地球に降り立ち彼の冒険が始まる、という物語です。

 

 巻末の解説など様々なところで人類補完機構シリーズ全体のことが説明されているので助かります。本来この作品だけ読んで評価するものではないのかもしれませんが、単独の作品としても楽しめます。SF的発想の豊かさも素晴らしいのですが、ある種の詩情のようなものが感じられる作品でもあります。しばしば詩が挿入されることからもそのことは明らかですが、著者の本職は大学教授ということで、そのことも作風に影響しているようです。専門はアジア政策だそうで、この専門テーマが異文化交流とか、ファースト・コンタクトもののSFを執筆するのに活かされているように感じます。

 

 ユートピア化して逆に停滞した地球に活力を与えようとする「補完機構」。労働は動物から人間に改造された下級民と、動物の脳を与えられたロボットが行い、人間は「真人」と呼ばれている。そんな世界での少年の物語です。