山田五郎著『アルケミスト双書 闇の西洋絵画史 殉教』を読みました。

 

 テーマは「殉教」。ヨーロッパでは殉教の絵がたくさん描かれてきました。第1章は「殉教の先駆」と題し、キリストの磔刑図を紹介しています。数あるキリストの磔刑図でも、個人的にはマティアス・グリューネヴァルトの『イーゼンハイム祭壇画』がインパクト大です。リアリズムの磔刑画で無残です。また、ルーベンスの磔刑図は、ウィーダが『フランダースの犬』を執筆するうえでインスピレーションになったことはよく知られています。本書には収録されていませんが、ダリの『サン・ファン・デ・ラ・クルスのキリスト』が意表をつく構図で好きです。

 

 2章は使途・福音記者の殉教です。具体的には聖ペトロ、聖パウロ、聖マタイ、聖ヨハネ、聖ヤコブらの殉教図です。

 

 3章は聖者の殉教で、ここが圧倒的に長くなっています。聖セバスチャンの殉教図は、同性愛者に愛されることが多く、オスカー・ワイルドも三島由紀夫も愛したグイド・レーニの絵が有名ですが、本書には収録されていません。代わりにこちらも有名なアンドレア・マンテーニャの絵が収録されています。

 

 4章は無名の殉教者でネロによる虐殺の絵などが収録されています。

 

 最後に日本の殉教者の絵が掲載されています。実はキリスト教の殉教者が多い国で、これは秀吉や家康がキリスト教を弾圧したからです。とりわけイタリアの無名画家による『元和の大殉教図』が印象的です。