知人からイギリスの小説家トマス・ハーディ原作の『テス』のDVDをもらったので観てみました。これは2008年にBBCが製作したドラマで4話構成、トータル210分ほどです。これだけの尺があるので、物語を丁寧に描いている印象です。なによりイギリスの田園風景が主人公とも言えるほどの映像美が楽しめるのが魅力です。有名なストーンヘンジでのラストシーンも印象的です。

 

 ストーリーは原作にかなり忠実であるように思います。俳優については全然知らない人たちばかりですが、テスの女優さんは綺麗だし、アレック役とエンジェル役の俳優さんもイケメンです。

 

 物語に不満を感じる人もいるようです。テスは何も悪くないのに、どうしようもない男たちの間で散々な思いをし、悲劇的な結末を迎えます。ヒロインが可哀そうという意見ももっともですが、これこそハーディです。人間は運命に翻弄されるものだというペシミスティックな人生観がハーディの特徴であり、後年の『ジュード』になるともっとひどくなります。私は『ジュード』に関しては流石に好きになれませんが、『テス』は結構好きです。また、ハーディは小説家として出発し、途中で小説の筆を折り、詩人に転向します。この転向は珍しいと思いますが、イギリスの自然をうたったハーディ後年の詩も味わい深いものです。

 

 『テス』の映像作品となれば、ロマン・ポランスキー監督による映画『テス』という決定的名作があります。あの作品でテスを演じたナスターシャ・キンスキーがあまりに美しく私も好きな映画です。両者も見比べるのも一興です。