吉田伸夫著『「時間」はなぜ存在するのか 最新科学から迫る宇宙・時空の謎』(SB新書)を読みました。まだ出版されたばかりの本です。日経新聞の書評欄で取り上げられていて、興味をもちました。

 

 時間とは何か、という本はこれまで様々読んできました。文系人間ですが、それなりに詳しいつもりです。本書も1章はガリレオ、ニュートン、アインシュタインといった物理学者たちの仕事が紹介されていて、この種の本としては定番の始まり方をします。相対性理論、エントロピーといった言葉がキーワードです。

 

 2章になると時間は流れる、という錯誤について語っています。個人的にはビッグバン理論に関する章が面白かったです。ビッグバンと聞くとなんらかの爆発のようなものだったと想像していましたが、そのようなものではなく、静かなものであったようです。

 

 後半は「いきものの時間、人間の時間」と題し、生物学の領域にも入っていきます。このあたりは物理の本としては珍しいと思います。

 

 本書の大きな特徴はSF映画、文学への言及が多いことでしょう。映画では『インターステラー』(ワームホールとの関係で)、『シン・ゴジラ』(生物が変体する点に注目)など。小説ならH・G・ウェルズの『タイム・マシン』、筒井康隆『時をかける少女』、谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(未読です)、グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』(未読です)、マンガなら手塚治虫『火の鳥 未来篇』などが取り上げられています。なかでも、傑作のわりに言及されることの少ないオラフ・ステープルドンの『スター・メイカー』が言及されているところが、ファンとしては嬉しいところです。