本多猪四郎監督の『モスラ』を観返しました。本田監督は1954年の『ゴジラ』を撮った監督であり、数々の特撮映画、特撮ドラマを監督した名匠です。特筆すべきは脚本を中村真一郎、堀田善衛、福永武彦という文学者3人が担当している点です。かといって小難しい内容ではなく、子供が楽しめる娯楽映画に仕上がっています。特技監督は円谷英二さんです。

 

 南海の島から「小美人」(ザ・ピーナッツが演じている)を無理やり日本に連れてきたため、彼女らを取り戻すためにモスラが日本にやってくる、という話です。モスラ幼虫が日本に上陸して辿るルートには意味があるようですが(『モスラの精神史』参照)、最終的に東京タワーに繭をつくります。シンボリックな建物を破壊するのは怪獣映画の定番です。成虫になったモスラはロリシカ国を襲いますが、これは明らかにアメリカをモデルにした架空の国です。戦争で戦かった日本とアメリカが同じ怪獣に蹂躙されるのは意味深です。

 

 CGがない時代に工夫を凝らして映像をつくっているのがわかります。CGを用いた映像よりもこちらの方が絵力があると思うのは、私が古い人間だからかもしれません。インファント島で卵から孵るモスラ幼虫、海を渡るモスラ幼虫など、一枚絵としても力があります。

 

 フランキー堺さんはじめ、香川京子さん、上原謙さん、志村喬さん、平田昭彦さん、小泉博さんなど、特撮ものではお馴染みの昭和のスターが多数出演しています。