『図説 英国ナショナル・トラスト紀行』(小野まり著)を読みました。河出書房からでている「ふくろうの本」シリーズの1冊です。このシリーズは写真やイラストといったヴィジュアル資料を中心に様々な文化を教えてくれる、個人的にはよくお世話になっているシリーズです。

 

 ナショナル・トラストとは19世紀イギリスで誕生したボランティア団体で、歴史的建造物や自然景観を守ることを目的とした組織です。具体的にはそうした土地を買い取り、保全に努めるという活動をしています。『ピーター・ラビット』の作者ビアトリクス・ポターがこの活動に参加していたのは有名です。彼女は絵本の収入で風光明媚で知られる湖水地方(Lake District)の土地を買い取り、ナショナル・トラストに寄贈しました。これによって予定されていた鉄道敷設によって景観が損なわれることが防がれました。

 

 本書はナショナル・トラストが管理している土地、建造物を写真中心で紹介しています。冒頭はロマン派の詩人ワーズワースゆかりの地で、ワーズワース自身はナショナル・トラスト以前の人ですが、その精神はナショナル・トラストのそれに通じる人です。次に「革命的な環境保護者」と呼ばれる美術史家のジョン・ラスキン。そして、ポターの話になります。

 

 2章はカントリーハウスになります。各地にのこり、ナショナル・トラストが管理している大邸宅が紹介されます。

 

 3章はイングリッシュ・ガーデン。英国式庭園は日本庭園にも近く、日本でも人気ですが、「20世紀最大の傑作」ナイマンズ・ガーデンらが紹介されます。

 

 

 4章は有名人の邸宅です。具体的にはウィンストン・チャーチル邸、ヴァージニア・ウルフ邸、ウィリアム・モリス邸、ニュートンの生家、アガサ・クリスティが休日をすごした家「グリーンウェイ」、ジョン・レノンゆかりの家、ポール・マッカトニーの家などが紹介されます。

 

 5章は映画の舞台です。『ブライドと偏見』、『いつか晴れた日に』、『エマ』といったジェーン・オースティン原作の映画の撮影地、『ハリー・ポターと賢者の石』の撮影地、『嵐が丘』の撮影地らが紹介されます。

 

 というわけで、観光ガイドとしての性格も強い本でアクセス方法も紹介されています。