ジョセフ・マッケイブ(Joseph McCabe)のVaporizing Spirits: The Great Spiritualism Debateを読んでいます。

 

 コナン・ドイルがオカルト信奉者で、妖精のフェイク写真を信じてしまった「コティングリー妖精事件」は有名です。シャーロック・ホームズの生みの親が妖精とか、霊媒とか、そういったオカルティズムを信じてしまったことに違和感をもたざるをえません。しかも、科学的、理性的に検証したうえで信じているのが不思議です。彼は当時としては高いレベルの科学的知識をもっていたはずで、そう考えるとますます不思議です。

 

 一方マッケイブはもともとはカトリックの司祭で、その後合理主義の立場からカトリックを批判したイギリスの作家です。キリスト教に批判的という意味では両者は似ていますが、オカルトに対しては対照的な立場をとっており、マッケイブはオカルトを批判的に論じています。二人はオカルトをめぐって論争したこともあったようです。本書はドイルが本物と判定したオカルト現象を批判的に論じた書です。

 

 一章は霊媒(medium)を扱っています。コナン・ドイルも無批判に霊媒を信じていたわけではないのですが、本物と信じていた霊媒もいました。マッケイブはそれらを偽物と主張しています。2,3章は幽霊の出現、ラップ音等を論じていて、ここでは近代オカルト・ブームの火付け役となったフォックス姉妹のハイズビル事件も言及されます。4章は心霊写真。その後、透視、霊界からのメッセージ、自動書記などが検討されます。

 

 現在まで続くオカルト対反オカルトの論争はこの時代からあったわけで、そのはしりのような出来事であっただろうと思います。その貴重な記録です。