深作欣二監督の『華の乱』という映画を観ました。

 

 与謝野晶子を主人公とした物語で、吉永小百合さんが演じています。当然、夫の寛(鉄幹)も登場しますが、緒形拳さんが演じています。そして、晶子の周辺の人々―アナーキスト大杉栄(風間杜夫)、その妻伊藤野枝(石田ゆり)、女優の松井須磨子(松坂慶子)、小説家の有島武郎(松田優作)、作家の島村抱月(蟹江敬三)らが出演しています。

 

 明治~大正期が舞台ですが、アナーキストの取り締まりや、有島の不倫相手の夫が妻のことを人間扱いしない点など、時代の風潮がよく表現されています。最後は関東大震災で終わります。

 

 男はことごとくダメ男です。寛も駄目男で、晶子は散々な思いをします。有島も理想に燃えるが根性のない男で、結局は愛人と心中。有島と恋愛関係にあった晶子はショックを受けます。この時期の文学者は自意識過剰のナルシストの印象が強く、最後は女性を巻き込んで自殺する男が多い気がします。有島を演じる松田優作さんが、マッチョのイメージを捨て、内省的な作家をうまく演じています。なお、『あまちゃん』出演時の松田龍平さんはこの時の優作さんによく似ています。

 

 男はダメですが、かといって女も感情に流されがちで、いかに夫が愛人と出て行ったとはいえ、晶子も不倫します。松井須磨子の狂気も松坂慶子さんが圧巻の演技で表現しています。役者の力を感じることのできる作品です。

 

 当時の文壇の人間関係や世相を学ぶことのできる映画でもあります。