増村保造監督、有吉佐和子原作の『華岡青洲の妻』を観ました。古い白黒映画です。

 

 江戸時代の医師、華岡青洲は世界初の全身麻酔を施しての乳癌の切除手術に成功した人物として、医学史にその名をのこしている人です。植物から麻酔剤を創り出そうとするも、なかなかうまくいかない。そこで、青洲の母親、そして妻が実験台として名乗り出る、というストーリーです。

 

 原作も読んだことがあるのですが、原作通りに映画でも、母と妻による青洲の取り合いというか、嫁姑争いというか、女の戦いの物語になっています。母を演じるのは高峰秀子、妻を演じるのは若尾文子という名女優の競演を楽しめます。青洲は市川雷蔵と、これまた名優が演じていますが、あくまで女の物語であり、青洲の影は意外に薄くなっています。

 

 Wikipediaによれば、実際には麻酔薬の実験体として名乗り出た人は他にもたくさんいたそうで、母と妻だけではなかったそうで、基本は原作者による創作の物語ということになります。この母と妻の愛憎半ばする関係が面白く、解釈も難しいところです。単に憎みあっているわけではないところがポイントです。