一色まことさんのマンガ『ピアノの森』を読んでいます。コミックスは全26巻。まだ13巻までしか読んでいませんが、感想を書きます。なお、作者は名前から男性かと思っていましたが、女性です。

 

 主人公の一ノ瀬海(カイ)は「森の端」と呼ばれる歓楽街みたいなところで生まれ育った少年。家のそばの森にはピアノが捨てられていて、海はそのピアノを弾いて育った。この海が小学校でピアノの英才教育を受けている雨宮という少年と友人になる。また、学校にはかつて天才ピアリストとして活躍した阿字野が教員としていた。(森のピアノは阿字野のピアノであった。)海は阿字野にピアノを習い、ピアニストとして成長していくという物語です。私が読んだ最新の13巻では、海はショパン・コンクールに挑戦しています。

 

 音楽マンガには好きなものが多く、『のだめカンタービレ』、『神童』、『Blue Giant』、『Beck』、古いところでは手塚治虫さんの遺作『ルードウィヒ・B』など、どれも好きです。『ピアノの森』もそれらに劣らない素晴らしい傑作だと思いました。(まだ半分くらいしか読んでいませんが。)

 

 主人公が天才的なピアニストで、破天荒な性格というのは定番で、『のだめカンタービレ』のヒロイン・のだめもそうでしたが、やはり魅力的に造型されています。ライバルとなる雨宮との関係も、足の引っ張り合いではなく互いに尊敬しあっているのがいいし、阿字野もいかにもメンターといった感じです。つまり、この種の物語としては定番のキャラクターを配しているわけですが、それだけに安定した面白さがあり、読みやすい絵と相まって、読みだしたらやめられない牽引力をもつマンガだと思います。少年の、あるいはピアニストの成長物語なわけですが、こうした王道の物語はやはり力をもっているようです。