山内志朗著『哲学のエッセンス ライプニッツ  なぜ私は世界にひとりしかいないのか』を読みました。ライプニッツは17世紀ドイツの哲学者、数学者です。ニュートンとともに微分積分法を開発したほか、様々な分野で才能を発揮した人です。哲学者と紹介されることが多いですが、万能の天才と呼ぶにふさわしい人です。

 

 ライプニッツの時代―三十年戦争の時代―の話から始まります。また、巻末にはライプニッツの小伝がついています。

 

 ライプニッツには三大思想と呼ばれるものがあり、それは①モナドの思想、②予定調和説、③最善説(オプティミズム)です。③についてはライプニッツの思想中最も評判の悪いものだそうで、この世は神がつくった最善のものだとする思想だそうですが、このことについては本書ではあまり触れていません。

 

 中心はモナドの思想で、単子と訳されること多い語ですが、著者はモナドという表現を選択しています。私は原子のようなものかと思っていましたが、「生命と力を有し、この世に一つしかなく、分解できないもの」と理解できるものです。前半はモナドの話が中心です。

 

 中盤以降は「個体性をめぐって」と題し、副題にあるように、私とは何か、といったいかにも哲学的な話になります。ここでもモナド論をもとに話が進みますが、最終章では「自分」の唯一性という本書の核心になります。

 

 「哲学のエッセンス」シリーズの常のごとく、120ページほどの長さに手際よくライプニッツの哲学をまとめている印象です。ひじょうに理解しやすい記述になっているのですが、だからといって平易な本というわけでもなく、どれだけ理解できたか疑問です。