アクセル・ホネット著『私たちのなかの私 承認論研究』を読みました。最近、ヘーゲルの承認論に関心があり、本書に手を伸ばしました。

 

 本書はヘーゲルに発する承認論の基本設定を明瞭にするという意図の本です。西洋哲学の基本は主体と客体を切り離すというデカルト以来の二元論が基本だったという認識ですが、主体と客体の間に間主体的存在を認めるという考えをヘーゲルが想定したと考えています。(さらに言えば、ヒュームやアダム・スミスといったイギリスの哲学者がヘーゲルの前にいる。)つまり、自分を認識するためには他者が必要であるという考え方です。1章ではヘーゲルの承認論の基本を論じ、2章ではヘーゲルの法哲学をもとに論じています。このようにヘーゲル哲学については本書の前半で述べられています。

 

 中盤以降はヘーゲル後の承認論の展開を考察していて、リュック・ボルタンスキーとかローラン・テヴボー、デヴィッド・ミラーの正義論の話になります。このあたりになると、私などは名前も知らない、その主張はもちろん知らないような哲学者の話になって、私には難解でした。

 

 後半はフロイトやウィニコットといった精神分析学者の仕事を用いつつ個対社会の関係を論じています。例えば、日本でも自由と責任の問題が議論されることが多くなっていますが、ひじょうに現代的な問題になってきます。平等社会を実現するためには強い権力が必要になるわけですが、それが個人の自由を求めるリベラルの思想とどう折り合いをつけるか、といった問題です。

 

 全体的に難解な本です。