種村季弘著『吸血鬼幻想』を読みました。

 

 古い本ですが、吸血鬼についてのあれこれを知ることができます。吸血鬼に関する民俗学的考察、心理学的考察、吸血鬼小説(『ドラキュラ』はもちろん言及されるが、それほど詳しい言及ではなく、広く浅く様々な吸血鬼小説に言及している)、吸血鬼映画、吸血鬼を描いた美術作品といった具合です。

 

 吸血行為にはエロティシズムが伴うものというのは周知のことですが、本書でも詳しく論じられています。

 

 現実におきた吸血鬼事件にもふれています。日本でもあるかもしれませんが、ヨーロッパでは他人の血を吸ったという事件は結構あるようです。カニバリズム同様、相手の力を取り入れる、といった迷信も吸血行為にはあったようです。

 

 後半は、ジル・ド・レやバートリ・エルジェベト、ジョン・ヘイ(ロンドンの吸血鬼と呼ばれたシリアル・キラー)といった犯罪者を紹介しています。

 

 吸血鬼研究の先駆をなした作品のようです。幻想文化研究の大家の本だけに、オカルト好きなら読んで損のない本です。