フェルディナン・ド・ソシュールの『一般言語学講義』を読みました。

 

 私は大学では英文科でした。言語学の授業でソシュールの名前は聞いたことがあるし、シニフィエ・シニフィアンという言葉の意味もなんとなくではありますが、知っています。本書はソシュールの講義を弟子たちがまとめたもので、ソシュールの主要著書と考えられているようです。

 

 本書が与えた最も大きな影響は、言語を記号ととらえ、その恣意性を指摘したことにあるようです。例えば、我々が「イヌ」と呼ぶ動物が「イヌ」という名前である必然性はありません。英語ではdogと呼ばれるし、フランス語ではchienです。考えてみれば当たり前のことで、名前は本質を表しません。イヌという文字や音声はシニフィアン、イヌそのものはシニフィエということになります。このあたりのことは第1章「言語記号の性質」で論じられています。

 

 正直かろうじて理解できたのはここくらいで、残りはよくわかりませんでした。言語学の基礎知識がないとつらいと思います。

一般言語学というくらいなので、言語学の様々な領域を扱っています。最初が言語学小史として言語学の歴史をたどっています。それから言語学の対象と題し、ラング(lange、ある集団が使う言語の約束事のことで社会的なもの)、パロール(parole、ラングをもとにある人が使う言語で個人的なもの)、ランガージュ(langage、言語を通して行う行為の総体)に分類して説明していますが、難解です。いかにも「構造言語学」という感じになります。

 

 音声についても論じています。音の連鎖とか音の種類などの話で、私は一応大学で英語音声学の授業を履修していたので、専門用語も知ってはいる(硬口蓋音とか軟口蓋音など)のですが、難解です。

 

 後半では方言についてとか(言語の地理的多様性について)、言語と社会的集団の精神構造についてなどを語っています。

 

 やはりフランス語が中心ですが、英語はもちろんドイツ語、ラテン語など様々な言語に言及し、日本語に触れているところもあります。

 

 大学で言語学を学ぼうと考えている人には必読でしょうが、そうでない人にはハードルの高い本であると思います。