フィリップ・アリエスの『〈子供〉の誕生 アンシャン・レジーム期の子供と家族生活』を読みました。

 

 よくヨーロッパに「子供」は存在しなかった、と言われます。子どもは不完全な大人と考えられ、早く大人にすべきだと考えられたわけです。それがジャン・ジャック・ルソーが登場し、「子供」を発見した、というのが一般的な理解です。フランスで言えばアンシャン・レジーム期(革命以前の時代)のことで、イギリスで言えば子供の詩を多くよんだロマン派の時代になります。この時代(18世紀後半)に子供の認識が大きく変容したというわけです。

 

 本書にはルソーは登場しませんが、この時代の主としてフランスにおける子供の在り方を研究した本です。イギリスの状況にも多少を触れています。

 

 例えば子供の服装、学校生活、家族の肖像における子供の描かれ方などを手掛かりとして、子供の認識を考察しています。

 

 日本では子供は親と一緒の部屋で寝ることが多いと思います。一方、ヨーロッパでは、かなり早い時期から子供は自分の部屋で一人で寝ることが多いようです。また、遊びにおいても、子供の遊び、というものはなく、大人と同じ遊びをしたとのこと。大人の猥談の場でも子供は無視され、遠慮のない卑猥な話が子供の前でなされたとか。学校における寄宿制度や徒弟制度にも、子供に対する考えが見られるようです。考えてみると、18世紀以前のヨーロッパ文学(詳しくないけど)には、子供が登場することが少ない気がします。