今の時代、売上は追わない | 「儲け」のためにできること

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日々お客様の「儲け」のための事例やスキームをご紹介します。

先日、顧問先の子ども向けの習い事教室を営む社長から相談を受けました。
とてもやる気があり、目標に対してストイックな社長です。

子ども向けサービスのため、長期的に見れば縮小する産業であり、
社員にも優れた技能を求めているため、
規模の拡大ではなく質の拡大(生産性の向上)を目指しています。

【会社の状況】
 


生産性とは、売上から変動費(売上の増加に伴い、

比例して増える原価)を引いた粗利益を社員数で割ったものです。
社員1人が稼いだ金額の事で、今の生産性は850万円です。
今後5年かけて1,000万にしよう!という目標を決めたところでした。

社長からの相談は次のような内容でした。
社長「ショッピングモールから出店の話が来ているのですが、
   受けるべきかどうか悩んでいます。
   利益は出るけど生産性が良いのかどうか、
   受けるべきかどうかはっきりしません。どう思いますか?」


【テナントの出店条件】
①設備投資 350万円
②出店した際の業績予測
③社員2人が担当する。常に店舗にいるわけではないので、
 所要時間を人数に直すと社員1.25人分が人件費としてかかる

売上などの予測をお伺いし、整理した結果が以下の通りです。


毎年112万円の利益、5年で560万円の利益となります。
ここから投資額350万円を引くと、5年間で210万円の利益となります。

しかし、生産性は下がってしまいます
現在の生産性 850万円 > テナントの生産性 720万円

社長には以下のことをお伝えしました。
①「利益は210万円出るが、1年当りにすると約40万です。
  社員1人を採用して働いた結果が40万円ということです。
  良い水準とは言えません。」
②「生産性も下がります。しかし、広告宣伝という意味で
  やるのであれば良いと思います。
  今メインの仕事を受ければ850万円稼げて、
  テナントに出店すると稼ぎは720万円に減ります。
  1年で130万円損するので、5年で650万円の損失です。
  テナント出店で利益が210万出ますから
  650万円-210万円=440万円、
  5年間で440万円の広告宣伝費です。
  効果はありそうでしょうか?」

【結論】
このテナントには出店しないことにしました。
優れた技能を持つ社員が生産性の低い仕事に拘束されてしまうので、
より良い仕事が来た時に対応できなくなってしまうためです。
また、このテナントに出店しても、近くに他のテナントが出せないので
広告効果は無いという判断でした。

今日の日本では、人口減少・所得減少により
お客様も社員も求人者も限られており、年々数が減っていきます。
数を追って他の会社との取り合い合戦に巻き込まれると、
低収益、低賃金、長時間労働、低利益という悪循環にはまります。

今回の判断が良かったかどうかは分かりませんが、
数を追わない時代には生産性という指標で物事を見ることが大事ですね。


担当:工藤 正悟