第7回:「幸福とは(後) 『金持ちサラリーマン・貧乏社長 ~自由な人生のための“投資家脳
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『金持ちサラリーマン・貧乏社長
~自由な人生のための“投資家脳”の作り方~』
第7回「幸福とは(後)」
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━━━ 5年後 ━━━
僕は、ちょうど、この年の2年前、
ロブから事業資金を出してもらっていた最初の事業を売却し、
人生初のキャピタルゲインを手にしていました。
それは、その頃の僕にとっては、とてつもなく大金でした。
人生初の正真正銘、自分で稼いだ“大金”でした。
僕は、この事業売却の過程で『あるアイデア』を思いつき、
すぐに実行に移しました。
そのアイデアは見事に当たり、
半年後には事業が軌道に乗り始め、
信じられないくらい順調に成長していきました。
新しいアイデアもどんどん湧いてきて、
やること、なすこと、すべてが良い方向に進み、
神がかったように、何をやっても上手くいきました。
仕事が楽しく、寝ても起きても仕事のことばかり考え、
ますますビジネスにのめり込んでいきました。
それにともない売上もどんどん上がっていきました。

photo credit: prosto photos
それから1年が経ったある日―
シェルビー(仮名)という人物が会社を訪ねてきました。
彼は32歳の若き経営者で、見た目にもバシッとしていて、
いかにも仕事が出来そうな感じでした。
彼は、僕にある提案をしてきました。
そのアイデアは、僕にとってはメリットが大きく、
リスクがとても少ないものでした。
何よりも彼の人柄に惹かれた僕は、
その提案を受けることにしました。
その彼との共同事業は、思った以上に成果を上げ、
僕らは、信じられないくらい大きなお金を手にしたのです。
僕の周りには、たくさんの人が溢れ、
毎晩のように仲間たちと食事をし、お酒を飲み、
いろんなことを朝まで語り合いました。
多くの人が僕のことを称賛してくれました。
しかし、このみんなの称賛が、
しだいに僕を変えていきました・・・。
いつしか僕は、
高級ブランドのスーツに、高級腕時計を身に付け、
週末は、ホテルのスイートルームを借りて派手なパーティー。
フェラーリを買い、ポルシェも買いました。
そして、何度もラスベガスに遊びにも行きました。
挙句の果てに、高級住宅街に土地を買い、
家を建てることになりました。
今、考えてみると、みんなの称賛をキープするためだったのでしょう。
しかし、僕がそんなことに気づくはずもなく、
自信に満ち溢れ、完全に有頂天でした。
この時は、この幸せが、永遠に続くと思っていたのです・・・。

photo credit: Eiti Kimura
━━━ そして、運命の『5年後』がやってきます ━━━
その日の朝、
会社にシェルビーから1本の電話が入りました。
「面白い案件があるんだ、一緒にやらないか?」
僕は、その日のうちにシェルビーと会う約束をしました。
夕方、彼の会社の1階にあるカフェで待ち合わせをしました。
彼は、僕が到着するなり、いきなり話し始め、
1時間もの間、関をきったように一気にしゃべりまくりました。
かなり、興奮している様子でした。
それほどの儲け話でした。
しかし、今度は僕たちもかなりの資金を用意する必要があり、
ハイリスク、ハイリターンの案件だったのです。
しかし、自信過剰で天狗になっていた僕に迷いはありませんでした。
シェルビーと折半で、その資金を出すことにしたのです。
その資金は、僕の全財産の9割に相当し、
その中には、すでに設計図が出来上がっていた
マイホームの建築費用も含まれていました。
その建築費用の支払い時期がまだまだ先だったため、
欲に目がくらんだ僕は、
とりあえずそのお金を使うことにしたのです。
結果は、無残でした・・・。
僕とシェルビーは、ありえないほどの大金を失ったのです。
僕は、マイホームを断念し、
フェラーリを売り、ポルシェも売りました。
お金になるものは、すべて売りました。
一瞬にして、財産のほとんどを失ったのです。
同時に、自信も失いました。
そして、僕は、シェルビーを恨み、
友人であり、良きパートナーだったシェルビーも失いました。
まさに天国から地獄に落ちた瞬間でした。
しばらくの間、仲間を避け、一人でいることが多くなりました。
僕を称賛してくれていた人たちの評価が気になりました。
誰もが僕を、あざ笑っているかのように感じました。
僕は、自然と、最初に渡米した頃に暮らしていた街に来ていました。
そこで2週間くらい過ごしました。
━━ そんな時、ふと、しばらく疎遠になっていたロブを思い出し、
そして、同時に、あの『心の器とお金の器』の話を思い出したのです。
僕は、急にロブに会いたくなり
勇気をふりしぼり彼に連絡をしました。
するとロブは、
「そんなホテルなんかに泊まらず、ウチに泊まりなさい」
といって、温かく僕を迎え入れてくれました。

photo credit: momentcaptured1
僕は、今まであったことを全てロブに話ました。
「いい経験をしたな」
ロブは、静かに一言、僕にそう言いました。
僕は、一気に張りつめていたものがとけ、
安心したのか、自然に涙が流れました。
「君は、大金を手にしてみて幸せだったかい?」
ロブにそう聞かれ、
僕は、やっと冷静にここ数年のことを振り返ることができ、
こう言いました。
「イヤ、いま思うと、幸せじゃなかったんだと思うよ。
いつも心が満たされず、お金が増えれば増えるほど、
むしろ逆に“もっともっとお金が必要だ”と思うようになったんだ。
あれが欲しい、これが足りないと不満ばかりだった。
そして、周りの評価ばかりが気になって、
みんなにもっともっと称賛してもらおうと派手に振舞ったんだ。
みんなの評価が落ちないようにと、必死だった。
いつも心が休まらず、何かに追われている感じだったよ。
そして、いつしか自分を見失っていたんだ」
するとロブは、
「君は、不安定なハシゴを勢いよく登って行ったようなものだ。
みんなが褒めるからどんどん上まで登って行った。そうだろ?
だから、調子に乗り、実力以上のところまで登り、
ついにハシゴから落ちてケガをしたんだ。
でも、ハシゴでよかったじゃないか。
もし高層ビルから落ちてたら即死だ、ハハハハ(笑)」
と笑い、こう続けました。
「ビルを建てる前には必ず基礎を打つだろ?
基礎を打つには、まずビルを何階建てにするか決めないといけない。
それだけじゃない、つまり設計図がいるんだ。
設計図通りに完成すると、頑丈なビルができる。
しかし、10階建てのビルを建てようと思って基礎を打ったのに、
20階建てが建ちそうだからと言って、
途中から急に20階建てを建てるとどうなる、危険だろ?」
━━ 僕は、ロブと出会った頃、
自分で立てた『ライフプラン』のことを思い出しました。
「そうだ、ロブ、僕は自分のライフプランを忘れてたよ。
目の前の利益に目がくらみ、ライフプランを忘れてた!!」
そう言うと、ロブはニコッと笑い、
「人生もビジネスも一緒だ。
“出口”から逆算して考えるクセをつけるんだ。
それに合わせて計画を立てる。
あとは、計画通りにやるだけだ。
もし、計画を変更する場合には、全てを見直し、
アップデートする必要がある。
いったい、君のハシゴはどこにつながっていたんだい?(笑)」
僕は、急に視界が開け、いきなり前向きになっていきました。
「じゃぁ、ロブ、僕のように心の器の準備ができないうちに、
突然、大きなお金が入ってきちゃった場合はどうすればいいの?」
すると、ロブはニヤリと笑い、
「簡単さ、器を借りればいいのさ」
と言い放った。
え!?
器を借りる?
どういうことだ????
そう思っていると、すぐにロブはこう話し始めた。
「多少、個人差はあるにしても、
自分ひとりで持てる“心の器”の大きさには限界がある。
だから限界を超えた分は、
同じヴィジョンを持つ仲間の器に入れてあげるんだ。
例えば、君の“心の器”の容量が10だとしよう。
そこに15のお金が入ってきた場合、
容量を超えた分の5を、
5人の器に1づつ入れてあげてもいいし、
2人にそれぞれ3と2というふうに入れてあげてもいい。
君がバランスを見て入れてあげればいい。」
「なるほど!!
器から飛び出した分を、悪魔に持っていかれるくらいなら、
仲間にあげた方がいいに決まってるよね。
でも、お金をあげるの?」
「ノー。単なるお金じゃなく、資金だ。
チャンスと経験をあげるんだよ。
“今度は、君が成功する番だよ”ってね。
つまり、仲間の成長を後押ししてあげるんだ」
「もし、うまくいかなかったらどうするの?」
「うまくいかなくてもいいんだ。
彼等は自分自身の経験から学ぶことが必要なんだ。
とにかく、自分の器に収まりきらない分は、常に仲間に与える。
こうすれば君の“心の器”は、いつも余裕がある状態だろ?
だから、常に心が豊かでいられる。
そして、いつの日か、君が後押しした仲間たちが成功していく。
すると、君の周りには、君と同じヴィジョンを持ち、
素晴らしい“心の器”を持った人間たちがいずれ揃うことになる。
みんなの器を合わせれば、とてつもなく大きな器になるはずだ。
君は、みんなに感謝され、
君の“心の器”は更に大きく成長するはずだ。
そして、君は本当の幸せを知るだろう」
━━━ そしてこの時、僕はハッとした。 ━━━
「そっか。そうだったんだ。ロブ、ありがとう。
これは、全てロブが僕にしてきてくれたことなんだね。
本当に、ありがとう!!」
僕は、自分の愚かさと、
ロブへの感謝の気持ちで涙が止まりませんでした。
その夜、シェルビーにも電話をし、再会の約束をしました。
そしてここから、僕の人生の第2章が始まったのです―
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Sさんのした経験と、
大富豪ロブの『心の器とお金の器』の話。
ガツンと響きますね。
こういうことは、やはり経験しないと
語れないことだと思いますが、
それでも、知っておくことで、
リスクを最小限にしたり、できることはたくさんあるはずです。
前号と今号は、
繰り返し読んで、心に刻むと同時に、
「自分にとっての幸せ」
「どういう人生でありたいか」
「何のために、どれだけのお金が必要か」
ということを、
自分自身としっかり対話したいと思います。
―よろしければ、
今回の講座を受講したあなたの、
感想や意気込み、自身の取り組みなどを教えてください。
S氏もあなたの声が非常に励みになっています。
今回も、前向きで、メンバーの役に立つ声を、お待ちしています!
※コメント欄にお書きください
いよいよ次回は最終回です。
また次回お会いしましょう。
チーム・シークレットマネークラブ-和僑-
リーダー
柳田厚志
【バックナンバー】
第1回「ファイナンシャルインテリジェンス」
第2回「リアルリッチ~本物のお金持ちとは~」
第3回「お金の5つのステージ
~なぜ、日本には“リアルリッチ”がいないのか?~」
第4回「投資家~本物の投資家との出会い~」
第5回「投資道」
第6回「幸福とは(前)」
