これから就職活動を始める学生には、まず知っておいて欲しいのが「労働基準法」です。
雇用者側が提示する勤務条件で良ければ、労働者は雇用契約を結んで働きますが、雇用者側が一方的に有利な契約とならないように、労働者の就業条件や給与、健康に配慮するよう一定の基準が法律で明記されています。
それが労働基準法なのですが、日本では労働条件を雇用契約書で交わす習慣があまりなかったようで、有給休暇の日数や結婚・出産・忌引きなど冠婚葬祭くらいで、会社の労働条件を良く知らずに長く勤めている従業員も少なくないのが実情です。
(法律上は社員がいつでも閲覧できる所への掲示が義務付けられています)
それは、今まで多くの企業が定年までは無期限での雇用をしていましたし、1950年代以降は景気も物価も上昇志向であった為にあまり問題にもならなかったのですが、ここ数十年の景気変動や社会情勢に伴い、企業の業績も上昇だけでなく大きく下降する事もあり、それによって大規模な工場閉鎖や事業縮小など、従業員の雇用も不安定になってきました。
仕事が忙しくて人が足りない時には、企業がより有利な条件を提示して優秀な人材を獲得しようとしますが、昨今のように就職したい学生にとって厳しい環境だと、そこまでしなくてもある程度企業が考えているレベルの優秀な人材は獲得できますので、今は企業側が有利な条件を出せるともいえます。
そんな仕事に対する考え方や業務内容への理解不足があっても、まずは就職、というところから起きているのが、企業と新卒就労者との雇用に関するトラブルです。
いざ就職してみれば、思っていた以上に過酷な労働条件や、忙しくても代わりがいない為なかなか休みも取れず普段から長時間労働を強いられた上に、休日は研修やらで休みらしい余暇も取れない。
研修や会社の指定したボランティア活動なのに、休日出勤にはならず、休日出勤の代休や残業手当も無かったり、名ばかり管理手当を気持ち支給するだけで実態は支払われていなかったり・・・
そんな状態が続いて、心神喪失から就業不能や自殺するまで追い込まれた、といった社会問題化している“ブラック企業”と呼ばれる企業への就職。
仕事が最優先で家庭や自分の時間は二の次、という人はともかく、どうしてもその仕事を続けなければ!!という思いや理由がなければ、過酷な労働条件や賃金の低さを嘆く前に、退職して別の仕事を探すとか、支払われない未払い賃金の請求をするなど、法律に基づいて労働者の権利を行使すればよいのですが、意外と労働に関する法律が知られていないところが、労働者側にとって不幸の原因ではないかとも考えられます。
学生たちの就職先を探す学校や職員にも、まるで企業には“性善説”でもあるかのように、労働基準法に従わない労働を課す企業など存在していないかの如く、就職先が決まって学校の就職率が上がれば、多少の事には片目をつぶっても・・・と就職活動の支援をしているようにも受け取れます。
日本でもサービス業の従事者割合が、すでに全就業人口の1/3を超えていますし、米国の調査では、22年前に生まれた子どもが大学卒業時に就職先に選んだ企業や団体は、その7割近くが生まれた時にはまだ存在していなかった業種やサービスなのですから、いつまでも集団就職先みたいな有名製造業などへの就職が人気です、みたいな考え方では、子どもたちの将来にとっては決していい選択肢になるとは思えません。
例えば、携帯電話・スマートフォン・ネット通販・オンラインゲーム・PCソフト開発といったIT関連、再生医療や一次産業に関わるバイオ関連企業、介護保険事業、太陽光発電など再生可能エネルギー関連、投資ファンドにヘッドハンティング専門企業に加えて、非営利のNPO等々、数え上げればキリがないほど、この数十年で新しい業種やサービスが増えてきました。
それを、労働条件など書類でしか判断できないような就職活動では、会社の知名度や給与条件といった表向きのイメージで選びがちなのは学校や親の方ではないのでしょうか。
そうであれば、学生よりも学校や親がもっと学習する必要があるのかも知れません。
大学だけではありませんが、勤務条件の良し悪しを判断する前に、労働基準法なども踏まえて、就職して社会人になってから困らないように、働く事の意味や法令に関する情報提供を学生の内にしっかりと教える必要があると思います。