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憲法 平成24年度 問題7
■ 問題 ■
労働組合の活動に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例に照らし,妥当なものはどれか。
1 組合員の生活向上のために,統一候補を決定し,
組合を挙げてその選挙運動を推進することなども労働組合の活動として許されるので,
組合の方針に反し対立候補として立候補した組合員を統制違反者として処分することも許される。
2 労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置を促進し,またはこれに反対する活動は,
政治活動としての一面をもち,組合員の政治的思想・見解等とも無関係ではないが,
労働組合の目的の範囲内の活動とみることができるので,
組合員に費用負担などを求めることも許される。
3 国民全体の奉仕者である公務員の争議行為を禁止すること自体は憲法に違反しないが,
争議行為をあおる行為の処罰が憲法上許されるのは,
違法性が強い争議行為に対し,争議行為に通常随伴しない態様で行われる場合に限られる。
4 公務員の争議行為は禁止されているが,政治的目的のために行われる争議行為は,
表現の自由としての側面も有するので,これを規制することは許されない。
5 人事院勧告は公務員の争議行為禁止の代償措置であるから,
勧告にしたがった給与改定が行われないような場合には,
それに抗議して争議行為を行った公務員に対し懲戒処分を行うことは許されない。
難易度 ☆☆☆/☆☆☆☆☆
■ 解説 ■
正解は、肢2です。
1 妥当ではありません。
三井美唄労組事件(最判昭43.12.4)によると、
対立立候補者に対し、「断念するよう勧告又は説得することは許されるが,その域を超えて,
立候補をとりやめることを要求し,これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは,
組合の統制権の限界を超えるものとして許されない」とされています。
勧告・説得までは許されますが、統制違反者として処分することは許されません。
立候補の自由が、選挙権の自由な講師と表裏の関係にあり、
自由かつ公正な選挙を維持するうえで、きわめて重要であるからです。
2 妥当であり、正解です。
本肢のような活動につき、国労広島地本事件(最判昭50.11.28)は、
「このような活動について組合員の協力を要求しても,
その政治的自由に対する制約の程度は極めて軽微なものということができる。
それゆえ,このような活動については,労働組合の自主的な政策決定を優先させ,
組合員の費用負担を含む協力義務を肯定すべき」としています。
労働者の権利利益に直接関係する活動であり、また、
政治的自由に対する制約の程度が、肢1と比べると軽微であるから、この結論になったと考えられます。
3 妥当ではありません。
全農林警職法事件(最判昭48.4.25)において、まず、
「争議行為を違法性の強い又は社会的許容性のない行為によりあおる等した場合に限って
これに刑事制裁を科すべき趣旨であると解するときは,
いうところの違法性の強弱の区別が元来はなはだ曖昧であるから
刑事制裁を科しうる場合と科しえない場合との限界がすこぶる明確性を欠く」とされています。
すなわち、明確性の原則に反するとしています。
そして、判例は、続けて、
「争議行為に「通常随伴」し,これと同一視できる一体不可分のあおり等の行為を
処罰の対象としていない趣旨と解することは,
一般に争議行為が争議指導者の指令により開始され,打ち切られる現実を無視するばかりでなく,
何ら労働基本権の保障を受けない第三者がした,
このようなあおり等の行為までが処罰の対象から除外される結果となり,さらに,
もしかかる第三者のしたあおり等の行為は,
争議行為に「通常随伴」するものでないとしてその態様のいかんを問わずに
これを処罰の対象とするものと解するときは,
同一形態のあおり等をしながら公務員のしたものと第三者のしたものとの間に
処罰上の差別を認めることとなって,
ただに法文の「何人たるを問わず」と規定することろに反するばかりでなく,
衡平を失するものといわざるをえない」としています。
そして、「このように不明確な限定解釈は,
かえって犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり,
その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存在する」としました。
本肢のように、あおり行為を限定的に解釈することは、不明確であり、憲法31条に反するということです。
4 妥当ではありません。
肢3の判例で、
「公務員は,もともと合憲である法律によって争議行為をすること自体が禁止されているのであるから,
勤労者たる公務員は,かかる政治的目的のために争議行為をすることは,
二重の意味で許されないものといわなければならない」とされています。
5 妥当ではありません。
本肢にあるような争議行為(ストライキ)に関与したことを理由としてされた農林水産省職員らに対する
停職3ヶ月から6ヶ月の懲戒処分の取消請求を行った事例があります。
その懲戒処分につき、最判平12.3.17は、
「ストライキが当局の事前警告を無視して二度にわたり敢行された大規模なものであり,
右職員らが,右ストライキを指令した労働組合の幹部としてその実施に指導的な役割を果たし,
過去に停職,減給等の懲戒処分を受けた経歴があるなどの原判示の事実関係の下においては,
著しく妥当性を欠き懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものとはいえない」としました。
判例は、裁量権を逸脱したかどうかで結論を下しています。
ひとつの事例判決かと思われます。
ただ、懲戒処分を行うことが必ずしも許されないわけではないので、
それを許されないとしている本肢は、妥当ではありません。
判例に照らして正誤・当否を求める問題では、
その判例を読み込んでないと解けない問題もあります。
今回のような長い判決文を読むことは、最初は本当に苦痛だと思いますが、
慣れてくると、それほど苦痛には感じなくなります。
ポイントは、主語と述語をしっかり見極めることです。
判決文の特徴として、一文が長いことがあげられます。
これが読みづらい一因となっています。
なので、主語と述語が何なのか、それを意識して読んでください。
そして、要するにこういう事なんだな、と一言で自分を納得できる状態にもっていってください。
自分が納得できなければ、ひとつの知識として他の人に説明できないし、
また、本試験でも役に立ちません。
先日、試験の合格発表があったばかりであり、今年の試験は、まだまだ先です。
いまのうちに勉強体力をつけておきましょう!
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