今から約1ヶ月前くらいのこと。


たまたま実家に出向いた際、農作業をしていた母がおもむろに言い放った。




「あ。そういえば古い方のお家を来月、取り壊すことにしたからね〜」




"古い方のお家"とは言葉通り、実家の土地に建っている内の古い家のことを指す。 

私の実家には、何故か昔から家が2軒建っているのだ。


実家には祖父母(もっと昔には曽祖父母も)も暮らしているのだが、かといって

「じゃあ私たちはこっちで暮らすから、義理父さんたちはあっちでね」

……といったように住処を二分していたわけでもない。


何故かみんな一緒に固まって、どちらかの家で暮らしていた。

当時せいぜい5歳程のガキンチョだった私にも、"古い方の家"に住んでいた記憶ががっつり残っている。


しかしもう片方の家を新しく建て直してからというものの、"古い方の家"はもはや無法地帯となってしまった。

とある一部屋だけは唯一、祖父が尺八の練習室として昨今まで使用していたが、祖父がその尺八を手放してしまった今、あの家に踏み入れる者は誰もいない。





「取り壊す前の片付けをしているんだけど、住んでいた頃の荷物がほとんど置きっぱなしだから、大変なんだよ〜」



母はのほほんと言うが、そりゃあ大変だろう……。

私の記憶が確かなら、箪笥や化粧台はもちろん、押入れの中まで荷物がぎっしり詰まっていた筈だ。
私が子供の頃、狂ったように観ていたジブリやディズニーのビデオテープ集団も、そっくりそのまま見つかるに違いない。

あの家を放置してから早20年以上。

「あんなのもう誰も住まないんだからさっさと取り壊しちゃえばいいのに」

などと常々思っていた私だが、いざ取り壊すとなると感慨深いものが滲み出るものである。










……そんなこんなで、昨日母からLINEでメッセージが届いた。


『重機であっという間に終わっちゃった!基礎まですっからかんだよ〜』




あらそうですか……。


せっかくなので今朝、すっからかんになったという我が家を見に行ってみた。


……おお。本当に何もない。

今までどどんと立ち構えていた壁が無くなり、向こうの青空が抜けて見えるよう。 


何だか寂しいような、すっきりするような……。




ついでにお庭の様子もチラ見。

暖かい日が続いたので、梅の花が満開になっていた。


梅の花ってどうしてあんなに上品な芳しい匂いがするんだろう。

桜はほとんど香らないけれど、あまり知らない桃の花はこれくらい香るのかしら?



……そういえばこの梅の木。取り壊した家の築年数と変わらないくらいの樹齢なんだよなぁ。

梅は長ければ100年くらい生きるらしいが、この異常気象の中、どれくらい耐えられるものなのだろうか……。




今日はなんだか物哀しい気分のお花見から、一日がスタートしたのでした。