複合汚染 (著)有吉佐和子から。
「ブタの胃袋が小さくなっちまったんでよ。十年前(1960年頃?)は一つの、胃袋で十人前以上のガツがとれたのに、この頃じゃ五人前がやっとだねぇ」
「どうしてでしょう」
「配合飼料を見たことがありますか」
ブタや牛用の配合飼料は大きな紙の袋に入っていて、どのメーカーのものも例外なく粉末状かでなければ粒状にかためたペレットと呼ばれるものであった。
「あのぉ、牛やブタはこんなものばかり食べているんですか」
「これじゃ胃袋どころか歯もいらないんじゃないかしら」
「そこにホルモン剤と抗生物質と防腐剤AF2の親類がぶちこまれているんですよ」
「おまけに狭い所へ詰め込まれているんですから病気にならないほうがどうかしていますよ」
人間の食品には全面禁止になった防腐剤AF2は、生物の遺伝子染色体に異常を起こせ、つまり奇形児の生まれる原因になるから、厚生省も禁止に踏み切ったのだが、防腐剤AF2と同じ基を持った防腐剤が配合飼料の中には大量に投入されている。
そこでブタは病気になった。奇形仔が生まれている。
奇病の報告があちこちで発表されている。
たとえば屠畜場に運ばれる食用ブタの65パーセントが胃がん、胃潰瘍、その他の胃病にかかっているという。
「あのぉ、こんな立派な胃潰瘍でも、肉のほうは検査を通過するんですか」
「そうです。内臓の方は一部廃棄しますが、食肉の方は枝肉として等級検査をやるんです」
困ったなぁ。嫌だなぁ、病気のブタなんて、肺がんの牛なんて、私は食べたくないと思うけど、あげたてのトンカツに向かって
「あなた胃潰瘍でしたか」
と訊いても答えてくれないのである。
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これは空想のホラーのお話ではなくて、現実のお話です。
『ああ、肉の実態を知ってしまったよ』というあなた、どうしますか?