ハリウッドスコアのレシピ | ハリウッド映画音楽業界の歩き方

ハリウッドスコアのレシピ

映画、テレビ、ゲームで音楽を語るとき、「ハリウッドサウンド」という言葉は本当によく使われる。「映画音楽=ハリウッド」というのは、「日本=寿司」「アメリカ=ハンバーガー」という感じなのだろう。

でも「ハリウッドサウンド」とは一体何なのか?

John Williamsの壮大なオーケストラ・スコアも「ハリウッドサウンド」で、Hans Zimmerの近代的なプロダクション・スコアも「ハリウッドスコア」だけど、もし彼らがロンドンで制作したら「ロンドンスコア」というわけではないだろう。

僕の考える「ハリウッドサウンド」とは、「哲学と拘りが詰まった制作手法」のこと。キーワードは「仕込み(プリプロダクション)」と「専門家(スペシャリスト)」だと思う。

映画のエンドクレジットを見ると、たくさんの役職を見かける。オーケストレーター、シンセプログラマー(マニュピレーター)、サンプル・デベロップメント、ミュージコロジストなど。本当にたくさん。あれは正にハリウッドサウンドのレシピ。作曲家の役目は、何でもできる才気溢れる超人になることではなく、目指すサウンドを作るために、ベストのチームを作って達成すること。だから、本当に色んな専門家がいるし、専門職としての生計も成り立つ。

例えば、Mychael Dannaはエスニック音楽学に長けた作曲家でありながらも『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』では、エスニック音楽学専門家 (Ethnomusicolist)をチームに入れることで、「自分なりの解釈のエスニック風味のスコア」ではなく「忠実にエスニックな要素を取り入れたスコア」に仕上げた。

Junkie XLの『マッドマックス怒りのデス・ロード』はも、Sonic SmithsのSamと長い期間仕込むことで、あのサウンドに到達した。ちなみに収録はハリウッドではなく、シドニーのTrackdown Studio (http://www.trackdown.com.au/) です。

このような「仕込み」をする際、予算と時間があるのは理想的。専門家も雇えるし。でも、それは絶対必要なわけではない。音楽の総予算が50万円でも仕込むことはできる。それは、いつものテンプレートで書き始める前に、u-heのZebraでプロジェクト用のパッチを作ったり、自転車のスポークを叩いてサンプリングしてRXで整音してKontaktパッチを作ることかもしれない。もしくは、Auxに拘りのシグナルチェーンを作ったり、Lemurをプログラムすることかもしれない。もしくは、僕のように、闇を想像するために、耳せんとノイズキャンセルのヘッドフォンと目隠しとマスクをして1日過ごして、自分の心理状態を分析することかもしれない。

拘りと愛を注いで「仕込み」を行うと、プロジェクトに対しての情熱が高まる。これもいいことだ。

寿司の花は握りだけど、味は仕込みが全て。これはハンバーガーも同じで、サンタモニカにあるPono Burger (http://ponoburger.com/) はオススメです。


Episode 1: Template Setup and Workstation Layout - Studio Time with Junkie XL