ラーメン屋から学ぶ | ハリウッド映画音楽業界の歩き方

ラーメン屋から学ぶ

最近出来たというラーメン屋に行って来た。夜11時に到着。深夜にも関わらず賑わっているため外で5分程待つことに。ノープロブレム。待つのは好きだ。

メニューを見て先に注文することになった。外で注文して待つこと5分、店内に入る。新装開店の店内は非常にお洒落。メニューもよくデザインされている。キッチンの雰囲気もいい感じだ。ラーメンも美味しかった。ウェストサイド(サンタモニカ周辺)ではかなり美味しい方だと思う。(ちなみにLAで一番美味しいラーメンはHollywoodとLa BreaにあるIKEMENだと信じてる)

完食して満腹になる。「さて、お会計を」とお願いすると「現金オンリーでカードは使えないので向かいのATMで下ろして来てください」とのこと。日本とは違い、LAでは小売店や小さな飲食店でもカードで支払えることが一般的。現金オンリーの店は店内やメニューに大きく「CASH ONLY」の表示がある。新装開店の繁盛店なのに現金オンリーというのはかなり珍しく、また店内でもそのサインを見なかった。

とは言え、食い逃げをするわけにもいかないので、3分ほど歩いてATMに向かう。そのATMは僕が使う銀行ではないため、他銀行間の取引手数料として合計6ドルかかるのはバカバカしいなぁ、と思いながらもATMに到着するが故障中のためおろせない。仕方がないので更に5分ほど歩いて違う銀行のATMに向かった。ま、急ぐ用事もないし、食後の運動と思えば悪くない。そう思ってお金を下ろして、またお店に戻った。

お支払いを済ませる際、再度店内を見渡してみるが、どこにも現金オンリーのサインがない。メニューもチェックしてみたがやはり表示がない。その様子を見てお店の人が声をかけてきた。

店員さん「すみません、うちキャッシュオンリーなんですよ。」

そなえもん「店内とメニューもチェックしましたが、その表示を見つけられませんでした。どこか書いた方がいいですよね。」

店員さん「お店の前に大きく書いていますよ。」

。。はて、見落としたか、そう思って帰り際に再度チェックしてみるが、入り口のドアにもその表示がない。更に見回すと、あった。入り口のメニューの台の下に確かにCASH ONLYと書いている。だが、目線にりずらい高さで、夜だと真っ暗なので全く気づかなかった。

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このラーメン屋の体験を帰り際の車で色々考えていた。お店側からしてみたら「お店の前に大きく書いているから十分に説明している」ということだと思われる。僕からしてみると「大きく書かれていても気づかなければ意味が無いので、もっと分かりやすいところに書いてくれ」という言い分である。

そう思った瞬間、自分の仕事術を見直し始めた。

人に事柄を伝えるとき、自分は「役目」や「義務」で伝えていないだろうか?本当に相手が最も「理解しやすい方法」で伝えているだろうか?素晴らしい作曲家をクライアントと抱えているが、その「価値が十分に伝わる方法」で伝えているだろうか?先方が自分のクライアントの良さに気づかないのは「相手に理解力がない」のではなく、「自分の伝え方が悪い」からなのではないだろうか?

ラーメン屋の「CASH ONLY」は確かに大きく書かれていたが目線に入らなかった。高さが低く、夜で暗かったからだ。これが原因で僕みたいな客が発生すると、店の回転率が落ちて、客の満足度も低くなる。誰も得をしない完全に不必要な痛手だ。

同じく、本当に素晴らしい作曲家を抱えていても、無意味に謙遜して低くアプローチして、その作曲家の価値を低くプレゼンしてはダメだ。逆も然りである。無駄に高く見せて出来ない事を誇張してはいけない。CASH ONLYの看板が妖しくブラックライトで光っていたら、お店の本来の質とは無関係に存在そのものを怪しんでしまうわけだ。

一番大事なのは状況を相手の立場で考慮して、相手のニーズを理解して、相手に最も分かりやすい方法で価値やメッセージを伝えることなのだろう。そうすれば、多少ぎこちなくとも、伝えるべきことは伝わる。。。そんな事を車の中で思い耽っていた。


ラーメン屋も非常に学ぶことが多い場所である。