原村に移住してから、東京で暮らしていた時より、よく空を見上げるようになった。
その季節、時間で色々な表情を見せてくれる空に、すっかり魅了されてしまった。


この何とも不思議な空間を、何と表現したらいいのだろうとずっと思っていた。



その世

この世とあの世のあわいに
その世はある
騒々しいこの世と違って
その世は静かだが

あの世の沈黙に
与していない
風音や波音
雨音や密かな睦言
そして音楽が
この星の大気に恵まれて
耳を受胎し
その世を統べている

とどまることができない
その世のつかの間に
人はこの世を忘れ
知らないあの世を懐かしむ

この世の記憶が
木霊のようにかすかに残るそこで
ヒトは見ない触らない ただ
聴くだけ

          谷川俊太郎

「その世」

あぁ、まさに