「自分で爪を切れない高齢者」という見出しと共に「訪問型爪切りサービス」について書かれた記事が目に止まった。
その記事を読みながら、まだ40代のころ勤めていた鍼灸整骨院での出来事を思い出した。
カーテンで仕切られたベッドが6床並んでいて、両隣の会話はほとんど筒抜け状態。
ある日、20代の鍼灸師が70代の変形性股関節症の患者さんに「おばあちゃん、こんなに足の爪をのばしていたら危ないから切ったほうがいいですよ」と言っているのが聞こえた。
おばあさんは曖昧な返事のまま、その会話は終わった。
股関節の痛みで深く脚を曲げることができず、爪を切りたくても切れない状況だったのだと想像する。
おばあさんはその時、たぶん悔しく切なくそして恥かしいお思いをしたのだと思う。
「爪切りは身体介護に該当するが、爪や周囲の皮膚に異常がなく、かつ、糖尿病など専門的な管理が必要でない場合は介護職員でも行うことができる」とある。
逆にいえば糖尿病などの疾患や爪白癬、巻き爪などがある場合の爪切りは医療行為となる。
高齢になれば何かしら問題があることのほうが多い。
独り暮しの高齢者にとって“足の爪を切る”ことは切実な問題なのではないかと感じる。
「訪問型爪切りサービス」の記事を読みながら、この取り組みが全国的に広がることを切に願った。