電車の座席に座れた。端の席だった。
しばらく乗っていたら、ぼくの席の横に立った人がいた。20代と思しき、Tシャツの男性だった。
そいつが、座席の間仕切りによっかかった。
背中を大きくぼくの方にせり出して来た。邪魔だった。
それでイラッとした。
しかし、何もせずにただ我慢していた。
だけど、心の中でそいつに対して毒づいていた。気分が悪かった。
この嫌な気分はこいつのせいか?と考えたが、
何で、自分の気分を他人によって左右されないといけないのだろう?と考えて、何となく自分が無力な気がした。
この感じは何だか知ってる感じだぞ、と思った。
「ああ、これは無力感だ。また拗ねているんだ。」
そう思って、気付いた。
ぼくは何も抵抗出来ない状態なのに、気を使うどころか背中で邪魔されているのだ、
と自分が感じているのが分かった。
いや、ぼくはそんなに無力じゃないだろう、と考えた。
何か出来ることが有るはずだ、と。
そして、けっこう経ってから思い付いた。
「背中が邪魔だからどけてくれ」と言えば良いんだという当たり前のことに。
しかし、言えなかった。
恥ずかしいと言うか。
よく分からないけど、他人に頼むのがはばかられた。
しばらくしたら、横の人は何故か壁側に寄りかかって、背中が邪魔じゃなくなった。
この気付き、嫌な事をされたら「止めて欲しい」と言えば良いということを気付く経験をするために、
この人が現れたのだと思った。
言いたいことが言えないのも怖れのせいかも知れない。
何にしても、言いたいことが言えないことで、生きづらくなっていると感じた。
たぶん、こういう人は今までも何度もぼくの人生に現れて生きていた気がする。
でも、今回のような気付きには至らなかった。
この日は、何故かこれに気付くタイミングが来たのだと思った。
またこういうチャンスがあったら、是非「どけてくれ」と言ってみたいと思った。