この世界に居場所なんてなかった
深い闇に溶け出すあたしの身体
何も言わずにただ見ていた
長い長い 道を歩いたと思う
暗い、長い道だった
小さな猫が鈴を鳴らして
あたしはそれすら見送った
まだ果てしなく続く
この世界に
焦燥と、
許したのは明日だけで
片手で革のカバンを掴む
帽子は目深にかぶり
1つ杖をついた
あたしは住人になれないまま
喪服で、
許した唯一の明日を迎える
生きることはしなければ
きっと闇に溶け出す身体が
朽ちてあたしを襲うかもしれない
この世界に居ることは
とても普通ではないようで
太陽があるこの空で
人並みに光を望んだって
何かが違って
長い間道のどこにも留まれずに
何かが違ってて
ただ歩き続けた
そのうち闇がこわい理由も
その感情があったことすら
忘れて杖をつき歩く
その永い永い道の中で
何回太陽の消失を
見送ったころだろうか
幼い頃欲しかった
ホタルの光が
闇にたくさん浮かんでいて
欲しかったことすら
見つけてやっと思い出せて
帽子を取ってその上に
宿らせて
光に手をかざして
小さく微笑んで
いつだったかあの猫が落とした
鈴をひとつ
ならした
嬉しくて
何度も
何度も
何度だって
何度だって
笑った
生まれて一つ目
杖を置いた夜の話



