ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング/マーク・ジョンソン | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

土曜日のきのう(2日)、エスコンフィールドに行ってきました。

割引のチケットが手に入ったので、

「1回は行ってみたい」と話していた80代の両親を連れて札幌から北広島市へ。

 

↑こちらは試合前の様子。

 

北海道在住の方はよくご存じだと思うのですが、

この球場はことし3月に本格的に開業した

日本ハムファイターズの球場です。

この日はオリックス・バファローズとの試合でした。

 

ひょっとしたら写真で気がついた方がいるかもしれませんが、

そう、「空が見えている」のです!

エスコンフィールドはドーム球場で、通常は屋根があります。

この日は「ルーフオープンデー」ということで開閉式の屋根を開いていました。

非常に開放感があり、湿度が低かったこともあって

気持ちのいい時間を過ごすことができました。

 

転勤で北海道に住み始めて2か月が過ぎました。

東京にいた頃と比べていろいろ生活に変化が起きていますが、

大きな違いとして「開放感」があります。

広い大地と空に囲まれていると、些細なことはどうでもよくなり

駆けだしたくなるようなエネルギーが湧いてきます。

 

この気分を示す1枚は・・・ということで取り出したのが

マーク・ジョンソン(b)の「ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング」です。

 

本作はタイトル通り、アメリカの広い大地を駆け抜ける喜びに溢れています。

ベースのマーク・ジョンソンをリーダーに、

パット・メセニーとビル・フリゼル(フリゼ―ルという表記もある)というツイン・ギター、

それにドラムのジョーイ・バロンという異色のカルテット。

内容はかなりアメリカンと言いましょうか、

軽快でフォークやロックンロール的な要素が随所に入っています。

 

実はマーク・ジョンソンは1980年代半ばから後半にかけて

同じツイン・ギター編成の「ベース・ディザイアーズ」というグループを結成しています。

ここではビル・フリゼルとジョン・スコフィールドがフロントを務めていました。

スコフィールドが入っていることで、こちらはかなり「尖った」サウンドとなり、

前衛的と思える面がありました。

 

この経験を踏まえて結成されたメセニーとフリゼルの組み合わせは

かなり親しみやすく「寛容さ」を感じるものとなっています。

2人のギタリストは自己のリーダー作ではない気軽さがあったのか、

いい意味でのジャムセッションのような趣もあります。

暦の上ではもう秋ですが、まだまだ夏のような暑さが続くこの頃、

「サマー・ランニング」の気分を味わってみましょう。

 

NY、アバター・スタジオでの録音。

収録年月日のクレジットはなく、1998年2月にリリースされています。

 

Marc Johnson(b)

Pat Metheny(g)

Bill Frisell(g)

Joey Barron(ds)

 

③Summer Running

マーク・ジョンソンのオリジナル曲。

バックに回ったアコースティック・ギターのサウンドが親密さと郷愁をもたらし、

その上を2人のギタリストが滑空するかのような展開です。

まずランニングのゆったり感を思わせるテーマを

2人のギタリストがユニゾンも交えて提示します。

最初のソロはメセニー。

素朴でちょっと「泣き」が入ったようなフレーズは彼ならでは。

よく分からない衝動で走っていた子ども時代を思い出してしまいます。

続いてフリゼルのソロ。

彼のエフェクトを利かせた浮遊的でやや「壊れた子ども」のような

先の分からない展開に興奮したのか、

ジョーイ・バロンがかなり煽っています。

ジャケット写真の印象にかなり近い演奏だと言っていいでしょう。

 

⑨In A Quiet Place

マーク・ジョンソンとイリアーヌ・イリアス共作のバラッド。

2人のギタリストの抒情性を堪能することができます。

太い音色にも関わらずメロディックな印象を与える

ジョンソンのベースに導かれ、

フリゼルが静かにテーマを奏でます。

続いてメセニーのアコースティックによるソロ。

彼らしい温かみがある音色で、

広大な大地に夕暮れが訪れるかのような風景が目に浮かびます。

これを受けたフリゼルは訥々とした「浮遊フレーズ」を

空に描いていくかのように放ちます。

2人がこれほどまでにロマンチックな形で寄り添うとは、

舞台を与えたマーク・ジョンソンに感謝です。

 

このほか ⑦Digny-Dong Day はひたすら楽しいアメリカン・ロックの趣です。

2人のギタリストがお互いにインスパイアされながら、

遊んでいるかのような雰囲気がいいですね。

 

さて、きのうのエスコンフィールドは5回終了時から屋根を閉め始め、

「ドーム球場」に戻りました。

雨がポツポツと降り始め、雨雲が直撃する可能性があったからということです。

 

 

結果的には球場の「2つの表情」を見ることができてお得だったかもしれません。

北海道ライフについて、これから少しずつご紹介していきます。