Walking in L.A./マーク・エムラー | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

大型連休がスタートしました。

ことしは5月1日(月)、2日(火)が平日ですが、

ここを休むことができれば9連休という方もいるのではないでしょうか。

 

私は仕事や個人的に取り組んでいたことがひと段落つき、

連休に入ってやや放心状態です。

ブログも時事的なお話は一休みして、

単純にこの時期に取り出した作品をご紹介しましょう。

マーク・エムラー(p)の「Walking in L.A.」です。

 

マーク・エムラー(1938-1999)はフランス・リヨン生まれ。

主にフランス・パリで活動し、同地に住んでいた

ケニー・クラーク(ds)らと共演しています。

日本ではステファン・グラッペリ(vl)のサイドマンとして知られているかもしれません。

 

内容はタイトル通り、ロサンゼルスの青空の下を歩いているかのような

軽快さ、明るさに溢れています。

サイドマンがレイ・ブラウン(b)、シェリー・マン(ds)という名手で

押さえるところは押さえているのも好感が持てます。

連休に何も考えず、部屋で流しているだけで気持ちいいいですし、

ヘッドフォンで聴きながら外を散歩するのもいいでしょう。

今回、聴きなおしてみてLPのB面にあたる後半の曲が良いのにも気が付きました。

 

ただリラックスしてボーっとしたい時のジャズ、どうぞ。

 

1980年3月27日、カリフォルニア州ハリウッドでの録音。

 

Marc Hemmeler(p)

Ray Brown(b)

Shelly Manne(ds)

 

①Yapad de papa(Betty's waltz)

エムラーのオリジナル。

おそらく、アルバムの中でこの曲の印象だけが

残っているという方もいるのではないでしょうか。

明るく可愛らしいワルツ。

子どもが踊っている風景が目に浮かぶような

元気の良さと可憐さがあるメロディから始まります。

続いてどっしりとしたベースと切れのいいドラムスに乗って

エムラーのピアノ・ソロが軽快に跳ね回ります。

ワルツではあるのですが、スイング感が全く損なわれずに

快調に進んでいくのが楽しい。

特にリズム・チェンジで通常の4ビートになったところから

喜びが増したかのように突き進んでいくのが気持ちいいです。

シェリー・マンとの小節交換で終盤がピシッと締まるのも聴きもの。

 

⑤Walking in L.A.

こちらもエムラーのオリジナル。

ややブルージーなトーンのテーマを受けて

すぐにピアノ・ソロに入ります。

これはエムラーのスイング感を堪能するトラックでしょう。

ちょっと低音に寄せながら力強いフレーズを繰り出してきます。

それが黒いノリにはなりきらず、

白人ならではの軽快さがあるところがヨーロッパのピアニストらしい。

レイ・ブラウンの重みのあるソロ、

シェリー・マンの音数は多くないものの説得力のあるソロは

それぞれの個性が良く出ています。

 

⑥Do You Know What It Means

Louis AlterとEddie DeLangeによるバラッド。

エムラーのピアノがしっとりとした音色を帯び、テーマを提示します。

これにベースがしっかりと重心をつけ、

ドラムがブラッシュ・ワークで寄り添います。

ピアノ・ソロに入ると、音を選び抜いたように訥々と

語りかけてくるようなプレイとなります。

エムラーの歌心が良く表れており、アルバムの中でも

ぜひ耳を傾けていただきたい集中力のある演奏です。

これに対し、ベース・ソロにスピードがあり

躍動感があるのも面白い。

レイ・ブラウンは単なるバラッドに終わらせないように

仕掛けてきたのかもしれず、さすが名手です。

 

ラストの⑧I'm an Old Cowhand のリズム・チェンジも楽しいです。

 

これから散歩に出かけて、仕事で凝り固まった頭と体をほぐしてきます。

みなさまも良い連休を!