ザ・ロンネル・ブライト・トリオ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

今年も残りあとわずかとなり、

この1年のことをあれこれ思い返すようになってきました。

 

振り返ると、安倍元総理の銃撃事件から見えてきた統一教会と政界の関係、

急激な円安、そしてロシアによるウクライナ軍事侵攻など、

長年に渡って溜まっていたものが噴出したような1年だったと思います。

 

個人的に印象に残っているのは11月に国連が

「世界の人口が80億人に到達すると見込まれる」と発表したことです。

正直、日本の少子化に興味はあっても、世界全体のことにはあまり関心がなかったのですが

「80億」という巨大な数字に「そんなことになっていたのか!」と驚きました。

 

子どもの頃、1970年代後半ぐらいだと思うのですが

学習雑誌で見た世界の人口が40億人台だったと記憶しています。

それから40年余りで倍近くになっていたとは・・・。

 

国連の広報ページを読んでみました。

世界人口が80億人に達する中、すべての人のための持続可能な開発を進めるため国連が連帯を呼びかけ(2022年11月15日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp)

 

公衆衛生が大きく改善されたことで死亡リスクが低下し、

平均余命が延びたことが背景にあると指摘されています。

一方で世界人口の3分の2は女性一人当たりの生涯出生率が2.1人を下回り、

人口増加が著しいのは世界の最貧国となっている。

そのほとんどがサハラ砂漠以南のアフリカの国々だということです。

国連が出しているメッセージは以下のものでした。

 

世界中のコミュニティーは、人口の増減に関わらず、

すべての国がその国民に良好な生活の質(QOL)を提供できるように整え、

最も置き去りにされている人々の境遇を引き上げ、

エンパワーメントを実現できるようにしなければなりません。

 

重要なメッセージではありますが、非常に難しいことでもあります。

おそらく衛生・教育・人権といったことのほかに

環境保護も進めていかなくては人類の未来はない。

しかし、国際的な格差を問う以前に各国内の分断も激しく

全体を考える余裕がないように思えます。

 

こうなってくると「余裕があった昔はよかった」的な懐古気分が出てきそうだなと考え、

「昔はよかったね(Things Ain't What They Used to Be)」

という邦題がある曲を聴くことにしました。

アルバム「ザ・ロンネル・ブライト・トリオ」に収録されています。

 

ピアニストのロンネル・ブライト(1930‐2021)はアメリカ・シカゴ生まれ。

子どもの頃からピアノを始め、ジュリアード音楽院を卒業しています。

ディジー・ガレスピー(tp)のビッグバンドに参加したり、

サラ・ボーンやレナ・ホーンといった歌手の伴奏でも活躍しました。

後年は主にスタジオ・ミュージシャンとして活動していたようで

手堅いスタイルやアレンジ能力から人気だったのでしょう。

 

このアルバムはサラ・ボーンとパリを訪れた時に収録されました。

手堅いリズム陣と共に品よくブルージーな雰囲気を醸し出している佳作です。

 

2曲目の「昔はよかったね(Things Ain't What They Used to Be)」が

なかなかいい出来なのですが、今回、歌詞を調べると必ずしも懐古調ではないのですね。

曲はマーサー・エリントンで作詞はテッド・パーソンズです。

 

Got so weary of bein' nothin',

Felt so dreary just doin' nothin'

Didn't care ever gettin' nothin',felt so low

Now my eyes on the far horizon can see a glow

Announcin' things ain't what they used to be.

 

何もない人生に疲れ果て

何もしないことに退屈し

何も得られないことを気にしさえしなかった

そんな最低の気持ちを持っていた

いま 地平線の向こうに光が見える

昔とは何もかもが違うと告げている

 

私の訳が正しければ、「昔が良かった」と言っているわけではなく

むしろ逆の意味に取れます。

これまでユーモアを感じさせる曲のイメージと邦題が結びついていなかったので

何だかしっくりきました。

年末に前を向きましょう!

 

1958年6月5日、パリでの録音。

 

Ronnel Bright(p)

Richard Davis(b)

Art Morgan(ds)

 

②Things Ain't What They Used to Be

ストレートにテーマを弾くブライトのピアノは

低音がしっかり鳴っていながらもスイング感があり、

ちょっとした爽快感があります。

すぐにピアノ・ソロに入りますが、あまり弾き過ぎず

ストーリーを作っているかのような展開が聴きもの。

最初はやや余裕を持ちながらファンキーなフレーズで聴き手を引き付けます。

1分45秒くらいからはダークな音色を差し込んで「おや?」と思わせてから

次第にスピードアップ、2分10秒くらいからは強いタッチで

歌い上げて一気に盛り上げてきます。

リチャード・デイビスのベース・ソロをはさんでから

再びピアノに戻り、黒光りするフレーズで最後のテーマにつないでいくところも

なかなか良い。

やはりこの曲は前を向いているかもしれません。

 

このほか、ナット・キング・コール作曲の⑥Easy Listening、

ブライトのオリジナル⑧Doxology もなかなか良いです。

 

それにしても、国連が言っていることは難しいけれど、やはり大切なことですよね。

むしろ、こうしたことを個々の国が言えなくなっていることが問題なわけで、

国連の大切さというのを改めて確認しました。

 

いま、国連はウクライナ問題で機能できていないことから評価を下げていますが、

「みんなが参加して共通の問題を論じる」ことの重要さは変わらない。

新しい年でも忘れないようにしていきたいものです。