アメリカン・クラシック/デクスター・ゴードン | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

俳優ショーン・コネリーさんの訃報が入ってきました。

1930年にイギリス北部のエディンバラで生まれたコネリーさんは

スパイ映画「007」シリーズの初代ジェームズ・ボンド役で人気を博し、

70代まで活動を続けました。

滞在先の大西洋バハマで亡くなったということです。90歳でした。

 

コネリーさんの死去を報じるけさのテレビのニュースを見ていたら、

2006年のこんなインタビューが紹介されていました。

 

質問 )ご自身の生涯の仕事でもっとも誇らしいものは?

コネリー)長寿かな。映画などの出演を求めるオファーがいまも続いていて

      私は今もえり好みができるということかも。

 

このやりとりからも分かるように、コネリーさんは年齢を重ねてからも愛された人でした。

「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」での老考古学教授役などが代表的でしょうが、

どこかユーモアがありつつ、がっしりとした体つきが醸し出す色気というか、

何ともセクシーな方だという印象があります。

一時代を画した名優のご冥福をお祈りしたいと思います。

 

ジャズで「年齢を重ねた色気がある」人は誰だろう・・・と考えていたら

デクスター・ゴードン(ts、1923-1990)の名前が出てきました。

ゴードンの場合はコネリーさんのような「健康的な色気」はありませんが、

図太い音に晩年はレイジーな響きが加わって独特の魅力を発していました。

 

今回は1982年に録音された「アメリカン・クラシック」を聴いてみましょう。

2つの異なるセッションが収められていることや、

ゴードンの晩年(といっても録音時は還暦前ですが)の演奏は

あまり取り上げられないので、人気とはいいにくい作品かもしれません。

しかし、ゴードンの「大人の色気」を知るにはなかなかいい出来のアルバムです。

 

先述した通り、2つのセッションが収められています。

それぞれがLP時代のA・B面です。

 

1982年3月8日、フィラデルフィアでの録音。

Dexter Gordon(ts)

Grover Washington,Jr.(ss)

Shirley Scott(org)

Eddie Gladden(ds)

 

1982年3月16日、NYでの録音

Dexter Gordon(ts)

Kirk Lightsey(p)

David Eubanks(b)

Eddie Gladden(ds)

 

3月8日のセッションがゴードンとしては珍しいオルガンとの組み合わせで、

しかもグローヴァー・ワシントンJr.が参加しているためにどうしても注目してしまいます。

しかし、B面にあたるカルテットの演奏もゴードンらしい堂々としたもので

なかなか聴かせます。

 

③For Soul Sister

ゴードンのオリジナル曲。

オルガンのシャーリー・スコットに捧げて書かれた曲だそうです。

ここでは「スローな」ゴードンの色気をたっぷりと感じることができます。

冒頭はテナーとソプラノが交互にテーマを奏でるゆったりとした展開。

これだけで「大人の余裕」というか、懐の広さを感じることができます。

続いてゴードンのソロなのですが、ここでリズムはさらにスローとなり

テナーも噛みしめるようにフレーズを繰り出してきます。

若者ならこのゆったりとした展開に耐えられないでしょうが、

「間」を武器にじっくりと語りかけてくるゴードンの音の太いこと!

自分のスタイルに自信を持った者にしかできないプレイだと思います。

続いてグローヴァー・ワシントンJr.の登場。

こちらはいい意味で「細い」ソプラノの音色を生かして静かに入ってきます。

これも非常に味があるのですが、途中、テンポが速くなり

激しい側面が顔を出すところは後輩の挑戦(?)でしょうか。

ホーンを受けたシャーリー・スコットのオルガン・ソロはひたすらブルージー。

ちょっと女性とは思えないほど沈み込んでいくソウルフルでスローな展開です。

この流れで最後のメロディもホーンがひたすらソウルフルにプレイ。

やはり「大人の色気」ってちょっとしたことでは動じない堂々としたものに起因するんでしょうかね。

 

⑤Skylark

おなじみ、ホーギー・カーマイケル作曲のスタンダード。

ここではレイジーなゴードンの側面が強く出ています。

メロディを非常にストレートに吹くゴードンはゆったりと落ち着いていますが、

音色の中にどこかもの悲しい部分があり、

人生のあれこれを乗り越えてきた人間の哀感とでも言うべきものを感じます。

冒頭から8分間ほどずっとテナーによる演奏が続きますが

スロー・バラッドをここまで長尺にわたって聴かせてしまうベテランもなかなかいないでしょう。

続くカーク・ライトシーのピアノは先輩の演奏を受けて音数を絞りながらも

リリカルな演奏で花を添えています。

 

「アメリカン・クラシック」は1982年録音でゴードンは当時59歳。

「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」は1989年公開、この年にコネリーさんは59歳になっています。

ちょうど還暦直前に2人は「大人の色気」を振りまいていたことになります。

 

いま、「成熟」ということが以前よりも難しくなっている気がします。

人生100年時代に入り、コネリーさんやゴードンのように50代後半で

円熟味を持っていたのがやや「早過ぎる」ようにも感じられてしまいます。

でも、何かしら意味のある蓄積と他者を引き付ける味わいを持つ人間でありたい・・・

50代初めの凡人としては願望のみが強くなってしまいます。