愛知県で開かれている国際芸術祭で、
いわゆる「従軍慰安婦」を象徴する少女像が展示されていたことに
批判的な意見が相次いだため、
芸術祭の実行委員会が少女像の展示をきのう(3日)限りで中止することにしました。
今月1日に開幕した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」には、
「表現の不自由」をテーマに慰安婦問題を象徴する少女像などの
展示コーナーが設けられていました。
この展示の趣旨が語られないままではいけないと思うので、
「あいちトリエンナーレ」のホームページから芸術監督の
津田大介さんのことばを引用しましょう。
「表現の不自由展・その後」という企画は、
日本の公立美術館で、一度は展示されたもののその後撤去された、
あるいは展示を拒否された作品の現物を展示し、
撤去・拒否された経緯とともに来場者が鑑賞することで、
表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、
議論のきっかけにしたいということが展覧会の趣旨です。
このことばからは、ある程度の議論は織り込み済みだったことが分かります。
にもかかわらず展示が中止になったのはテロ予告や脅迫電話、
電話応対した職員個人を攻撃するネットの動きなどがあったからです。
愛知県の大村知事の「あってはならないことが起きた」という強い表現が
事態の深刻さを表しています。
私が引っかかったのが、今回、権力側からの「圧力」が目立ったことです。
菅官房長官は芸術祭開幕後の記者会見で次のようなことを述べています。
河村市長は芸術祭の実行委員会の会長代行という立場だそうで、
「自分は関わっていない」風な発言はどうかと思います。
それを脇に置いても、自分の意に沿わない芸術作品に
税金を出すべきではないという考えは、
表現の自由や(幅広い国民から集められた公共財産である)
税金の使途についてあまりにも緊張感を欠いています。
実はこうした発言、先の津田さんのことばで指摘されている
「表現の自由を巡る状況」を明確にしています。
つまり、いま「表現の自由」はヘイトのみならず権力者とも
非常に厳しい闘いをしなくてはいけないということです。
「トランプ現象」以降、権力者が公的な立場を踏まえずに
自分の主張をむき出しにして攻撃することが普通になりました。
菅官房長官や河村市長の発言も、一昔前なら辞任に発展しかねないものですが
やがて「よくあること」と受け入れられていくでしょう。
しかし、こうした風潮の広がりが戦前のテロや国家統制に重なると
考えるのは私だけではないと思います。
今後、これが前例となって権力側からの圧力や
それに乗じたヘイトに歯止めがかからなくなることを怖れます。
嵐の前のような「悪い風」が吹いているー。
今回は「ILL WIND」という曲を聴いてみましょう。
ハンプトン・ホーズ(p)のアルバム「グリーン・リーヴス・オブ・サマー」に
収録されています。
ホーズは1928年ロサンゼルス生まれ。1977年に48歳で若くして亡くなっています。
1964年録音のこのアルバムでは、30代半ばということもあり、
勢いよりも抒情性に軸足を置いているような演奏が収録されています。
プロデューサーのレスター・ケーニッヒが書いたオリジナルのライナー・ノーツにも
「ホーズは最近のジャズを席巻している変化に対応するには十分に若く、
また伝統の一端を担えるほど歳を重ねている」とあります。
「成熟したホーズ」を味わえる作品と言えるでしょう。
1964年2月17日、ロサンゼルスでの録音。
Hampton Hawes(p)
Monk Montgomery(b)
Steve Ellington(ds)
②The Green Leaves Of Summer
冒頭、イントロからメロディ提示までスローなピアノ・ソロが続きます。
この音色が粒が立っていながらはかなげでもあり、
何ともいえない美しさを持っています。
夏の盛り、生命感が自然の中にあふれているのに、
なぜかその後の秋を感じてしまう瞬間のように・・・。
やがてトリオでの展開となりますが、
ドラムの軽快なブラッシュワークに乗りながらの
ピアノ・ソロが素晴らしい。
徐々にスピードを増しながら音色は力強さを増し、
次々とフレーズが繰り出されてきます。
聴き手に息をつかせないほどの
あふれんばかりのアイデアと、それでいながら哀感を漂わせた
独特の世界に引き込まれてしまう演奏です。
③ILL WIND
ハロルド・アーレンによるスタンダード。
「悪い風よ行っておくれ 私を安らぎの中にいさせて・・・」
という愛に悩んだ歌詞があるラブ・ソングです。
こちらも始まりはピアノのみ。
ゆったりとしたピアノは②と比べると優しく、明るい響きがあります。
時にテンポを変え、ワルツ調も盛り込むところも面白い。
トリオ編成になってからも展開に工夫があり、
バラッドとしてスローに徹するかと思われたその時、
テンポが上がってシングル・トーンで押すパートがあります。
その展開の巧みさと流れの変化は
「悪い風も長くは続かない」というメッセージすら感じさせる
余裕のあるものです。
学生時代、フランスの哲学者・ヴォルテールのものとされる以下の言葉に
感銘を受けたことがありました。
「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」
かつて自由な意見を封殺したことが国を間違った方向に進め、
多大な犠牲を内外に強いることになりました。
間もなく終戦の日を迎えます。
再び過ちを繰り返さないために、政治家には厳しい目を向けるべきだと思います。
