参議院選挙の投開票日から1週間になります。
結果はご存じの通り「特に目立った変化はない」というものでした。
与党が選挙前から6議席減らしましたが、参議院全体では過半数を優に上回り
安定した勢力を確保したからです。
けさのTBS「サンデーモーニング」では「風をよむ」というコーナーで
この参院選を振り返っていました。
その中でコメンテーターから重要な指摘がありました。
まとめると、このような内容です。
「今回の投票率は半分を切っている(48.8%)。そのうち自民党が得票したのは3分の1
(筆者注:比例の得票率が35.4%だったのでそのことを言っているのでしょうか)。
ということは6分の1、全体の20%に届かない支持で
民主主義のルールによって与党になってしまう」
考えてみると、この程度の低い支持で自民党(+公明党)が
安定基盤を得てしまうというのは困ったことです。
さらに深刻なのは与党の「圧勝」でもないということです。
かつて投票率が低いと自民・公明が勝つというのが常識でした。
それが与党はわずかながらでも議席を減らし、
一方で野党の伸びもそれほどではないというのはどうしたことでしょうか。
「サンデーモーニング」では、別のコメンテーターが
「自分たちのコアな支持層にしか働きかけない」選挙戦について解説していました。
今回、安倍首相は応援演説の場所・日程をあまり明かさずに選挙を戦いました。
選挙への関心が低い中、「コアな支持層」だけに働きけて
そこをがっちりつかんでしまえば政権を取れてしまう、というのです。
これは正しい分析でしょうが、「自分に好意的な人」にしか話しかけないので、
全体として議論は盛り上がらず、低調な選挙になったのだと私は思います。
支持層の固定化による社会の分断は、今回、かなり深まったとみていいでしょう。
弱者に徹底的に寄り添う姿勢を見せ、「消費税廃止」「奨学金チャラ」などを訴えた
山本太郎氏の「れいわ新選組」が、4月に立ち上がったばかりなのに
2議席を獲得したこともその表れと考えられます。
こうなってくると心配なのは「相手の話を聞かなくなる」ことです。
既にトランプ現象に顕著ですが、相手を「敵」としかみなさず、
攻撃姿勢だけが強くなると妥協の余地がなくなります。
革命や戦争による破壊で体制変革をすることは膨大な社会的犠牲を生みます。
それを避けるため、多数を取った側が相手の話にも耳を傾けつつ
「落とし所」を探るという面倒くさい手続きが民主主義の根幹になっています。
いま、世界各所で「面倒くささ」を排除し、自分の意見だけを押し通す
風潮が広がっています。
しかし、何より求められているのは「幅広い視野を持って相手をうまく取り込む」
という叡智です。流行らない考え方かもしませんが・・・。
今回は「うまく取り込む」ことにかけては一流のミュージシャンによる
作品を聴いてみましょう。
カル・ジェイダー(vib)の「サウンズ・アウト・バート・バカラック」です。
カル・ジェイダーは1925年、アメリカ・ミズーリ州のセントルイスに生まれました。
父親がタップ・ダンサー、母親がピアノを弾くという環境にあったジェイダーは、
幼いころ打楽器を演奏していたそうです。
やがてピアニストのデイブ・ブルーベックと出会い、ドラマーとして共演する中で
ヴァイブラフォンを独学で習得、幅を広げていきました。
1950年代前半、バイブラフォンで
ジョージ・シアリング(p)との共演も果たしたジェイダーは自分のバンドを結成、
ピアノやベースのほかにコンガを加え、ラテン色を強めていきます。
その一方、ストレイト・アヘッドなジャズ作品も残し、「視野の広さ」を印象付けていきました。
そんなジェイダーは1968年、同じくバイブラフォン奏者でもありアレンジャーでもある
ゲイリー・マクファーランドが設立した「スカイ」レーベルに作品を残します。
それが「サウンズ・アウト・バート・バカラック」です。
まだ若手だったバカラックの作品をバイブラフォンとオーケストラで
カヴァーしようという発想が大胆ですが、
アレンジャーがマクファーランドも含め3人いるというのも驚きです。
それぞれのアレンジを生かしながらポップで聴きやすいサウンドに
まとめあげているところにジェイダーのセンスがあります。
1968年8月6~8日、ロサンゼルスでの録音。
Cal Tjader(vib)
Mike Melvoin(org)
Garnett Brown(tb)
Jerome Richardson(reeds)
James Helms(g)
Harvey Newmark(el-b)
Jim Keltner(ds)
など 計17名のオーケストラ
①Moneypenny Goes For Broke
ピアニスト、マイク・アベンによる「入り」のアレンジが見事です。
ドラム・ソロによるイントロで始まり、オルガンとバイブラフォンが
メロディを提示した後に、さりげなくホーンが寄り添うー。
どんどんサウンドの厚みが増すのに、バイブラフォンの軽やかさもあって
スムーズに・おしゃれにポップな世界に入っていきます。
スロー・テンポのリラックス感があり、
いま六本木のバーでかかっていても全くおかしくない、
いやむしろ新しく聴こえる演奏と言っていいでしょう。
ジェイダーのソロが実は音数が多く、ジャズっぽく白熱しているのに
さりげなく聴こえてしまうところも素晴らしいと思います。
②What The World Needs Is Love
ゲイリー・マクファーランドの愁いあるアレンジが光るナンバー。
オルガンの刻む単調ながら柔らかいリズムに乗って
バイブラフォンが悲しげに入ってくる演奏を聴くと
雨模様の天気の中、一人歩くような情景が浮かんできます。
そうした中、アコースティックギターがバックに入り転調すると
何かさざ波が立つような優しい転換があり、
単純なスローバラッドに終わらない鮮やかな色彩を
曲に加えてくれます。
このアレンジの中を浮遊感たっぷりに舞うジェイダーの
バイブラフォンもなかなかのものです。
⑦I Say A Little Prayer
再びマイク・アベンのアレンジ。
このアレンジの特徴はオルガンとギターをフル活用したポップさと
随所で使われる手拍子です。
こう書くと安っぽい感じの音を想像されるでしょうが、
非常に華のあるアレンジになっています。
冒頭、ギターとオルガン、それに手拍子で勢いがついたところで
メロディをバイブラフォンが奏でます。
ここで一気に華やかながらクールなサウンドになるから不思議です。
よく聴くとオーボエといったホーンやバイオリンもさりげなく組み入れられ、
緻密な仕掛けがあちこちにあるのですが、
全体としては広がりのあるポップな仕上がりになっています。
中盤、ギターと手拍子でアクセントが付けられた後、
ジェイダーのソロとなるのですが、ジャズというよりはポップ・ミュージック。
ジェイダーの柔軟性を実感するプレイです。
3人目のアレンジャー、アラン・フォーストのアレンジに触れないでしまいましたが、
⑧Walk On By などでの映画音楽的なホーンの使い方と
メロディー重視の構成もなかなかです。
3人のアレンジャーの提案を取り込み、
どれにも自分の色を反映させたジェイダーの巧みさ。
その演奏のどれもに新しい挑戦に胸を躍らせる高揚感があります。
「相手とうまくやる」ことに喜びを感じ、胸を高鳴らせる感性ー。
政治の世界にもこんな余裕のある心を持った人が現れてほしいものです。
