首相官邸前でのデモが、
どんどん大規模になってきています。
このデモ、反原発を呼びかける市民グループによって
毎週金曜日に行われていたそうです。
東洋経済オンラインの記事によると、
4月の時点で参加者は数百人程度だったとか。
しかし、6月16日に野田政権が大飯原発の再稼働を
決定してから、参加者が大幅に増えました。
先の金曜日・29日には、主催者発表で
15~20万もの人が参加したのです。
警察が参加人数を主催者発表よりはるかに
少なく見積もっているためか、
これまでマスコミの取り上げ方は小さいものでした。
しかし、けさの新聞を見ていると、
だんだん「ただごとではない」という認識が広がり、
記事が掲載されるようになってきています。
私はいま40代ですが、振り返ってみると
「官邸前での大規模デモ」は記憶にありません。
とすると、これは本当に大変なことです。
「デモの記憶・経験がない」多くの日本人が、
権力の中枢に向けて声を上げようと
立ち上がったのですから。
おそらく、震災以前、多くの人たちは
「政治に対し、自分たちができることは何もない」
という無力感を持っていたのではないでしょうか。
それが、原発や復興へのあまりにもずさんな対応を見て、
「自分たちが当事者にならなければ」という考えが
出てきたのだと推測します。
そして、その効果は非常に大きいのではないかと思えます。
数万単位の人々が、原発問題を「我がこと」として怒りの声を挙げる。
国会議員という「代理」じゃ話にならない、
俺たちの声を直接聞け、と迫る。
そこには、「エネルギーを持った主権者」の姿があります。
デモのバックには、物理的に首相官邸前に行けない人や、
「エネルギー」こそないものの、同調する膨大な国民がいる。
政権も、こうした人々を無視することはできないはずです。
既得権益にがんじがらめになった「原子力ムラ」を変えるのは、
こうした「国民パワー」しかないのでしょう。
今回は「国民の声」が表現されている一曲に
耳を傾けてみましょうか。
カーステン・ダール(p)の「トリビュート・トゥ・ナイト・トレイン」に
収録されている「自由への賛歌」です。
この曲、何と言っても作曲者のオスカー・ピーターソン(p)の
プレイが有名です。
私のブログにもかなり早い段階で登場しています
↓
http://ameblo.jp/slowboat/entry-10137032669.html
ピーターソンがキング牧師の公民権運動に影響を受け、
作曲した「自由への賛歌」。
今回、調べてみてわかったのですが、
歌詞がつけられていたのですね!
ヘリエット・ハミルトンによる歌詞の一部をご紹介しましょう。
みんなの心がつながって 圧力から解かれることを望むなら
わたしたちは自由になれる
みんなの手がつながって 運命を形作っていくなら
わたしたちは自由になれる
何となく、いまのデモにも通じるメッセージです。
カーステン・ダールは、「自由への賛歌」を
アルバムの冒頭、ピアノ・ソロで演奏しています。
この決断、なかなか大胆なものと言っていいでしょう。
なぜなら、アルバムにはピーターソンと長年にわたって共演し、
「自由への賛歌」でもドラムを叩いていたエド・シグペンが
参加しているからです。
あえてシグペンから距離を置き、
たった一人でピーターソンの代表曲を弾く。
そこに、ダールのオリジナリティを追求する意地と、
曲への深い愛情が感じられます。
2007年録音。
Carsten Dahl(p)
Jesper Bodilsen(b)
Ed Thigpen(ds)
①Hymn To Freedom
気合いの入った「自由への賛歌」。
メロディでのスローなピアノ。
非常に澄んだ音色で、何かを悟っているかのような
響きさえあります。
ゆっくり、ゆっくり進んでいくメロディが一通り終わると、
ダールは左手で低音を重く弾き、
重量感のある機関車のように曲を「動かし」ます。
このさりげない躍動感が、アルバム全体にも
貫かれている気がします。
⑤You Stepped Out Of A Dream
リラックスしたトリオが聴ける一曲。
ダールの重たいタッチに対し、
ドラムが軽妙なブラシで応じており、
その対照が良い効果をもたらしています。
ピアノ・ソロではブルージーなフレーズが目立ち、
ダールのピーターソンに対する敬意がうかがえます。
⑦Someone Watch Over You
「曲を演奏する喜び」がメロディから伝わってくるバラッド。
こういう「心に入ってくる」プレイは、2000年代には珍しいですねえ。
くつろぎと緊張感のバランスも絶妙です。
ピアノ・ソロもメロディとほぼ一体化した流れになっており、
一瞬、どこからソロに入り、どこでメロディに戻ったのか
分からないほどです。
完成度が高いのにリラックスできる、聴き手にはありがたい演奏です。
⑬Hymn To Freedom
ラストはもう一度「自由への賛歌」。
同じピアノ・ソロですが、音はもっと「沈んで」います。
「沈思黙考する」自由への希望、といったところでしょうか。
見事なエピローグです。
ここのところ、原発や消費税問題で
開いた口がふさがらないような事態が続いていました。
そうした中でのデモの動きは、
「まだこの国も捨てたもんじゃない」という
希望を与えてくれました。
「自由への賛歌」の歌詞には、こんな一節があります。
どんな時でも どんな日でも
尊厳を持って生きていけば
わたしたちは自由になれる
