スタディ・イン・ブラウン/クリフォード・ブラウン~マックス・ローチ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


消費税率引き上げ法案が

衆議院本会議で可決されて以来、

民主党の混迷が続いています。


法案に反対した小沢一郎・元代表は

党の分裂をちらつかせながら、きょうも幹事長と会談。

本当に党が割れれば、解散・総選挙が一気に近くなるでしょう。


今回の一連の騒動で野田首相の政権基盤は

明らかに弱くなってしまいました。

「数の論理」で難しい局面に立たされた上に、

危険性が指摘される中での原発の再稼働など、

「決断する政治」のひどさが目につきます。

支持率が下がり続けているのもしょうがない感じがします。


しかし、困ったことに「後がいない」のも事実です。

大阪市の橋下市長?

いろいろと好みはあるでしょうが、

私にはかなり危なっかしい人に思えます。

さりとて、既成政党に応援したい人もいない。

これだけ選択肢がないと、本当に茫然としてしまいます。

まだ失言がないだけ、野田首相がいいような・・・・


「後がいない」ことに悩んだジャズ・ミュージシャンは何人もいます。

その一人がドラムスのマックス・ローチではないでしょうか。

ローチと言えば、クリフォード・ブラウン(tp)と組んだ

クインテットが非常に有名。

ローチの硬質なリズムと、ブラウンの輝かしい音色は

ハード・バップの黄金時代を作ったと言っても

過言ではないでしょう。


残念ながら、ブラウンの自動車事故のため、

このクインテットは2年ほどで崩壊してしまいます。

ローチは大きなショックを受け、

一時はアルコールに溺れていたそうです。


その後、ローチは復活。

様々なセッションに参加して素晴らしいプレイを披露しますが、

トランペッターとのバンドで大きな成果は残せませんでした。

やはり、失ったものが大きすぎたということでしょうか。


今回はブラウン~ローチのクインテットによる

「スタディ・イン・ブラウン」を聴いてみましょう。

クインテットの中でも完成度が高い作品で、

1955年2月のセッションで統一されていることから、

当時のバンドのまとまりを知ることができます。


1955年2月23~25日、NYでの録音。


Clifford Brown(tp)

Max Roach(ds)

Harold Land(ts)

George Morrow(b)

Richie Powell(p)


①Cherokee

不朽の名演。

ローチの激しいドラムとブラウン~ランドによる

「インディアン風イントロ」(?)で盛り上がった後、メロディへ。

アップ・テンポのリズムに乗って、メロディは一気に駆け抜けます。

最初のソロはブラウン。

彼はいつもソロの冒頭をかっこよく決めてくれるのですが、

この「書き出し」も素晴らしい。

目の覚めるような鮮やかな数音を、力まずに放ってきます。

ここを聴くだけでもアルバムを入手する価値があります。

さらに、普通のトランペッターなら追いつくだけで精一杯の

アップ・テンポをバックにしながら、悠々としているのがすごい。

温かく、胸躍らせるような音色でありながら、

高速フレーズを次々にヒットさせていきます。

この両立ができるのはブラウンだけでしょう。

この後、ランド~パウエルとソロが続きますが、

ブラウンと比べると、アップテンポがかわいそうなくらいです。

最後はローチが緩急をつけたメロディックなソロで

見事に引き締めてくれます。


⑥Sandu

ブラウン作曲のブルース。

リラックスしたクインテットを聴くことができます。

最初のブラウンのソロは「一筆書き」的なもの。

細かいパッセージを重ねるだけでなく、

時に長めのフレーズを交え、

サラサラとソロを「書いていく」ような趣があります。

続いてランドのテナー。

こういうブルースは強い彼、アクのある音色が

ぴったりはまっています。

後を追うリッチー・パウエルのピアノもリラックス。

彼はこれぐらいのミドル・テンポが似合うのかもしれません。

そして、ローチのソロ。

先に私は「硬質なリズム」と書きましたが、

ここでは彼のドラムが思い切り「歌って」います。

打楽器でこれだけメロディックになれるとは・・・驚きです。


⑧If I Love Again

ポピュラー・ソングをこのクインテット風にアレンジした一曲。

各人のソロが短く、さりげない曲ですが、

曲の明るさがミュージシャンのプレイに反映されています。

個人的に好きです。


⑨Take The A Train

おなじみ、ストレイホーンによる「A列車で行こう」。

伝説的なプレイと言ってもいいでしょうが、

冒頭と最後でバンドが機関車の響きを再現しています。

今にも列車が迫ってきそうな臨場感が得られる演奏です。

オープニングとメロディを経て、最初のソロはランド。

メロディの余勢を駆って、男性的なテナーが響き渡ります。

続いてブラウン。かなりハードに高音を吹きますが、全く無理がない。

それでいて演奏を楽しんでいる様子が伝わってくる。

本当に均整がとれた人ですねえ。

パウエルのソロを経て、ホーンとドラムの小節交換。

ローチの切れ味鋭いソロは絶好調ですし、

その後、シンバルでホーンをあおり立てるのもすごい。

そして、ラストのブラッシュワークで

機関車が駅に着くところを表現。

聞き手は列車が止まるところを想像しながら、

興奮をさますことができます。

完璧な構成、ではないでしょうか。


演奏を聴けば聴くほど、ローチがブラウンを失ったときの

悲しみが分かるような気がします。

ブラウンの「後」はやはりいなかったのだと

思わざるを得ません。


政治でも簡単に「後」を見つけられないでしょう。

迷走の時代が続くいま、私は安易な「後」を担ぎ出すのではなく、

誰がより「まし」なのか、精査するしかないと思います。

ローチが苦しみ、新しい表現を探したように、

当面は悩まないといけないのかもしれません。