昨日、菅改造内閣が発足しました。
けさの朝刊を読むと、前途を危ぶむ記事が目立ちます。
「“脱小沢”で党が亀裂か」とか、
「経済対策はできるのか」など。
一昔前、組閣となるとマスコミが「ご祝儀記事」を
書くことは常識でした。
「スタート時点では内閣を褒めてあげて、後はお手並み拝見」
というわけです。
しかし、内閣がコロコロ変わる事態や、経済が停滞する中で、
「褒めている余裕なんかない」という雰囲気が感じられます。
実際、私も菅総理の指導力には疑問を持っています。
彼が掲げるビジョンがいまひとつ見えないですし、
思いつきでアイディアを言ってみたり、
すぐ引っこめたりということがあるように思えます。
野党時代は舌鋒鋭い人、というイメージがありました。
ひょっとすると「攻めるのはうまいが、リーダーは苦手」
という、野党タイプの人なのかもしれません。
「市民活動出身の総理」としてがんばってほしいのですが・・・・
ジャズでも「リーダーが不向き?」と思える
ミュージシャンがいます。
ジャズ・ファンの間でも意見が分かれるでしょうが、
私は「リーダー向きではない」ミュージシャンの代表に
マイケル・ブレッカー(ts)を挙げます。
ブレッカーは1949年生まれ。
70年代からそのパワフルで現代的な音色が知られ始め、
57歳という若さで亡くなるまで第一線で活躍し続けました。
しかし、リーダー作は意外に少ないのです。
恐らく、その数10枚程度。
名声を得ていた割には、兄のランディ・ブレッカー(tp)との
コ・リーダー作や、サイドマンとしての活動が多かったのです。
その理由はいろいろあるのでしょうが、
私は勝手にこう考えています。
「リーダーとしての役割に負けてしまったからではないのか?」と。
彼の初リーダー作「マイケル・ブレッカー」(1987年)では、
硬さが目立ちます。
自分が中心であるという意識が強いために
「テクニックやパワーの披露」に追われ、
「音楽表現」の手前でつまずいている感じなのです。
これと比べると、彼がサイドマンとして参加した
↓パット・メセニー(g)の「80/81」
ドナルド・フェイゲン(vo,key)の「ナイトフライ」における
↓名曲「マキシン」でのソロなどは名演と言えるでしょう。
ブレッカーはサイドメンとして少し肩の力を抜き、
音楽全体の中で自分の役割を自覚した時に
いいプレイをする人なのです。
そんなブレッカーが残した印象的なリーダー作があります。
「ニアネス・オブ・ユ-~ザ・バラッド・ブック~」です。
アルバム・ライナーによると、彼はバラッドが好きだったとのこと。
しかも、ジョン・コルトレーンの名作「バラッズ」も大好きで、
いつかこうした作品を作ってみたいと願っていたそうです。
「バラッド」というテーマがあり、その中で何ができるか-
ブレッカーのような人は、こうした「枠づけ」があると
力を発揮します。
全体的にこれ見よがしのプレイはなく、
落ち着いて吹いているのが分かります。
パット・メセニー(g)やジャック・ディジョネット(ds)など、
初リーダー作と重なるメンバーも多いのですが、
音楽としてかなりの成熟が感じられます。
「2000年代ジャズ」の一つの成果でしょう。
2000年12月18~20日、NYでの録音。
Michael Brecker(ts)
Pat Metheny(g)
Herbie Hancock(p)
Charlie Haden(b)
Jack DeJohnette(ds)
James Taylor(vo)
②Don't Let Me Be Lonely Tonight
シンガー・ソングライターのジェイムス・テイラーの曲。
テイラー自身がヴォーカルで参加しています。
70年代のテイラーの作品でブレッカーは演奏し、
それ以来の仲だとのこと。
「永遠の青年」とも言えるテイラーの歌声が響き、
バックでブレッカーが控えめなアクセントをつけていきます。
テナー・ソロでは硬質さがありながら、情感を秘めた
音色が素晴らしい。
これこそ「良きブレッカーだ!」と言いたくなります。
③Nascente
ミルトン・ナシメントが演奏したことで、
ブレッカーが興味を持ったという曲。
ブラジル人作曲家の手になるものと思われますが、
非常に美しい、叙情性あふれる曲です。
南国の夕陽を思わせる穏やかなメロディを
ブレッカーは非常にストレートに吹いています。
パット・メセニーがギター・シンセサイザーを使った
ソロをとるあたりから、
曲は一気にミステリアスな色彩を帯びます。
この辺りのスケールの大きさ、広げ方は
プロデューサーとしてのメセニーの影響が大きいでしょう。
ピアノ・ソロに続くブレッカーのソロはパワフルですが、
あの乾いた咆哮はなく、叙情性はちゃんと保たれています。
④Midnight Mood
ジョー・ザビヌル(p)がキャンノンボール・アダレイ(as)の
グループに在籍していた時に書いた曲。
ブレッカーはこのアルバムで、有名ではない佳曲を
いくつか発掘しています。
やや気だるさのあるイントロの後、
ブレッカーがゆっくりとメロディを歌いあげます。
抑制された表現にはコルトレーンの「バラッズ」を
彷彿させるものがあります。
続くハンコックのソロは音数が少ない、
フレーズを一つ一つ「置いている」ような演奏。
彼の音楽性の幅広さが伝わってきます。
ここでブレッカーがソロで登場。
彼は伸びやかなフレーズを生かしたソロで
ピアノと見事なコントラストを作ります。
それぞれの個性がうまくからみあったトラックです。
有能が人が必ずしも能力を発揮できるとは限らない。
それは音楽でも政治でも同じです。
何をするにも「テーマ」「ビジョン」が大切なんですね。
ふらふらと生きている我が身を省みて、
さて自分は何を掲げていくべきか、考えた秋の夜でした。


