ルパン・ザ・サード・ジャズ ボッサ&フュージョン/大野雄二 | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


18日(木)夜のことになりますが・・・

大野雄二(p)トリオを聴いてきました!


大野雄二さんについては、以前、

彼が手がけてきた「ルパン三世」シリーズの

音楽について触れたことがあります。

http://ameblo.jp/slowboat/day-20091123.html


大野さんのライブには一度行ってみたいと

思っていたのですが、

なかなか日程が合わず、実現できずにいました。

木曜日、仕事が一段落したところで、

ふと「この時間ならどこかのライブに行けるのでは?」

と思ったのです。

ネットで検索してみると、

お茶の水の「ナル」で大野さんのライブが!

これは千載一遇のチャンス、と

私は予約も取らないまま、ナルへ駆けつけたのでした・・・


行ってみると、店内はいっぱい。

この事態は予想されていたので、

私は店の方に「立ち見でもいいので聴かせて!」

と申し出ました。

時間は夜9時頃で、ちょうど第2セットが始まるところ。

始まった時は立って聴いていましたが、

やがて店員さんが、空いたカウンター席に案内してくれました。

「ナル」のカウンター席と言えば、ピアノにくっ付いているかのような

独特の配置とデザインで知られています。

思いがけず、大野雄二さんの演奏を間近で聴くことができ、

いたく感激しました。

メンバーは以下の通り。


大野雄二(p)

俵山昌之(b)

江藤良人(ds)


誤解を恐れずに言えば、大野さんの演奏は「非常に日本人っぽい」。

これは悪く言っているのではありません。

非常にメロディックであり、柔らかいタッチが持ち味なのです。

黒人のピアニストのように「腹で弾く」ような力強さはないのですが、

その繊細な感性と、「“歌もの”が大好き」なところに

紛れもない「大野雄二の世界」があります。


この日の演奏では、ハンク・モブレー(ts)の

名演で知られる「リメンバー」や、

ソニー・クラーク(p)の「ディープ・ナイト」、

それにドヴォルザークの「遠き山に日は落ちて」といった

親しみすい選曲がされていたことも魅力的でした。

基本的には趣味のいいタイプのピアニストである大野さんですが、

「遠き山に日は落ちて」では、

(キース・ジャレットのように)イスから立ち上がり、

中腰で鍵盤を連打する場面もありました。

ライブならではの熱気ってありますね。


もちろん、「ルパン・ナンバー」も何曲か演奏されました。

「ルパン・ザ・サード」「ラブ・スコール」・・・・

私がうれしかったのは、ドラムの江藤良人さんが

ブラシを多用したプレイで大野さんを煽っていたことです。

甘いメロディもリズムがしっかりしていれば

立派なジャズになることを示した演奏でした。


今回はライブで聴いた2曲が収録されている

アルバムをご紹介しましょう。

「ルパン・ザ・サード・ジャズ ボッサ&フュージョン」です。

タイトル通り、4ビートだけではなく、

フュージョン・タッチの「軽やかさ」が目立つアレンジとなっています。

私は、かつて車を持っていた時、

このアルバムをカー・ステレオでよく聴いていました。

夕暮れ時に聴くと、ルパン三世の楽しいながら、

どこか哀愁が漂うムードが再現されるようで、

心地よかったのを覚えています。


大野雄二(p)

ソニア・ローザ(vo)

大久保敦夫(ds)

市原康(ds)

渡辺直樹(eb) ほか


①Lupin The Third

おなじみ、「ルパン三世のテーマ」です。

この演奏では、ブラジル出身のソニア・ローザが

ヴォーカルで参加しています。

ソニアの可憐でありながら、

ほのかな色気を漂わせたヴォーカルが非常に効果的。

ボサノヴァともフュージョンともつかない、

ムーディな仕上がりになっています。

フルートを基調としたホーン陣がバックに加わっていて、

サウンドの仕上がりは非常にソフト。

ジャズとは言えないかもしれませんが、

ルパンの世界にどっぷり浸るにはもってこいの演奏です。


⑩Love Squall

先日のライブでは、トリオがしっとりとしたバラッドとして

演奏していました。

このアルバムでは、ホーン陣にギター、

それにソニア・ローザの参加で

ボサノヴァのムードが満載です。

大野さんもエレクトリック・ピアノで参加。

哀愁たっぷりとなっておかしくない曲ですが、

大野さんが多重録音したとみられる

エレクトリック・ピアノと通常のピアノの

役割分担が絶妙で、ポップな仕上がり。

思えば、アニメのルパン三世で聴いていた音楽って

この感じに近いような・・・・


ライブで、たまたま隣に座っていた方が教えてくれたのですが、

大野さんの指はピアノの連打で腫れあがっているような

状態だとのこと。

ライブを聴かなければ、到底納得できないような話でしたが、

確かに激しいタッチが続くシーンがありました。

スタジオ録音でまとめきれない世界や

情熱があるからこそのジャズ、なのでしょう。

ライブの熱気が冷めやらぬ帰り道、

自分がジャズのパワーを本当に理解しているのか、

やや不安にもなったのでした。