先日、職場の先輩とお酒を飲んだ時のこと。
この方、もう50歳を過ぎているのですが、
非常に若々しい。
世の中の新しいことにアンテナを張り巡らし、
アイディアも非常に豊富で、
職場でも尊敬を集めています。
そんな彼が、こう言うのです。
「若者ほどチャレンジを恐れている。
俺より若者の方が保守的なんだよな・・・・」
一昔前の私なら、大いに反発したでしょう。
そんなことを言うなら、
若者のアイディアを生かせる環境を作るべきだ。
あなた達がどれだけ若者のことを
理解しているのか・・・・・と。
しかし、進歩なのか後退なのか分かりませんが、
今は彼のいうことが良く分かるのです
(やっぱり40歳という年齢もあるんですかね・・・)。
ある程度キャリアを重ねると、
基礎はできていますから、
そこそこの仕事はできます。
当然、それだけでは飽き足らなくなり、
何かやってこなかったこと、
新しいことを目指す人も出てきます。
その中には、時にこれまでの発想を
根底からひっくり返そうという人もいるでしょう。
何せ、ひっくり返してダメなら、
元に戻す方法を知っているのですから、
楽なものです。
一方の若者は、ものすごい才能の持ち主でない限り、
基礎を固めることに精いっぱいです。
細部の工夫で光るものを持っていても、
土台そのものをひっくり返すような発想は
なかなかできません。
そういう意味では確かに多くの若者が
元気ではあるものの保守的であり、
つい「スタンダードなレベル」を求めてしまう
傾向はあると思います
(※あくまで仕事上のことで、文化的な感性などに
ついては違うと考えますが・・・)。
そういえば、貪欲に新しいことを求めている
ジャズマンがいたな、と引っ張り出したのが
ロイ・ヘインズ(ds)の作品「テ・ヴ!」。
ロイ・ヘインズは1925年3月生まれで、
80代半ばになる今もジャズ界の第一線で活躍している(!)
驚異のドラマー。
すごいのは年齢だけでなく、常に「新しいもの」を求める姿勢。
かつてはチャーリー・パーカー(as)と共演したという
輝かしい経歴を持ちながら、振り返ろうともしません。
この作品では、フュージョン界のスター、パット・メセニー(g)を加え、
典型的な4ビートから一歩踏み出したプレイをしています。
しかし、そこに一切無理がないどころか、
彼なりのジャズに仕上げてしまっているところがお見事。
1994年録音。
Roy Haynes(ds)
Donald Harrison(as)
Pat Metheny(g)
David Kikoski(p)
Christian McBride(b)
①Like This
ピアニスト、チック・コリアの曲。
冒頭からドカドカと力のあるへインズの
ドラムが入って圧倒されますが、
曲は非常にポップ。
エレクトリック・ギターとスピード感のあるアルトが
新世代のジャズを響かせます。
バックのへインズは非常にカラッとしたドラミングで、
こういう曲でも合うんですねえ。
アルト~ギターと新感覚のソロが続きますが、
へインズは限りなく4ビートに近い、
前のめりのビートでプッシュします。
非常に爽快感のある演奏です。
②John Mc Kee
パット・メセニーの曲ですが、
どこか60年代のハービー・ハンコックを思わせる、
波打つようなリズムがある曲です。
変拍子と4ビートが入り混じる複雑なリズムを
へインズはここでも難なく、
しかもパワフルにこなします。
ビ・バップで才能を開花した人が、
よくまあこれだけ現代的なリズムを吸収できるなあと
感心してしまいます。
ここでのドラム・ソロのパワフルさ、切れの良さは
圧巻です。
③James
パット・メセニーの代表曲の一つ。
彼の名作「オフランプ」に収録されていました。
こんなポップな曲もやっちゃうの?という感じですが、
見事にへインズが自分のものにしています。
原曲ではバックのリズムは控えめでしたが、
へインズはメロディからアルト~ギター~ピアノ、
それぞれのソロのバックで、煽るのです。
その煽り方がとにかくすごい。
バスドラでドスドスきたり、鋭いシンバルの一撃があったり。
それもずっと煽りっぱなしではなく、
ピアノソロのバックでは思いきり抑えてから徐々に
盛り上げていく、というように変幻自在なのです。
この柔軟性には頭が下がります。
考えてみると、へインズはチャーリー・パーカーと共演した
1950年代から、「新しいものを吸収する」という点では
何ら変わっていないのかもしれません。
私の職場の先輩も、若者を低く見ているのではなく、
「吸収できるものは吸収しよう」という謙虚な姿勢を持って
彼らに接しています。
年配の人間はキャリアがある分だけ、
着想で若者より優位に立てるかもしれません。
しかし、最終的にそれを生かすには
「素晴らしいものに素直に耳を傾ける」
柔軟性が必要なようです。
