仕事を終えて、夜の街を歩いていたら、
半袖ではちょっと肌寒い感じがしました。
日中はまだまだ暑いのですが、
確実に秋が近づいています。
去年までの猛暑はどこへやら、
今年は駆け足で夏が過ぎていく・・・・
そういえば、この季節、我が家の定番である
ボサノヴァをほとんど聴きませんでした。
うだるような暑さでないと、ボサノヴァをかける気に
なれないんですよね。
ゆく夏を惜しみつつ、
夜に仕事の疲れを癒す音楽はないかと
棚から引っ張り出したのが「デュエッツ」。
イタリアのジャズ・フルート奏者ニコラ・スティーロと
ブラジルのギタリスト、トニーニョ・オルタが組んだ、
非常にシンプルなアルバムです。
オルタは単なるボサノヴァ演奏家ではなく、
世界の様々なミュージシャンとの共演で知られる
「コンテンポラリー・ギタリスト」と言っていいでしょう。
パット・メセニー(g)も彼のことを尊敬していますし、
日本人では矢野顕子が一緒にレコーディング
したことがありました。
このアルバムで一番感じるのは「風」です。
ジャズのスタンダードも演奏されていますが、
オルタの出自がそうさせるのか、
ここには温かい熱帯系の風が流れています。
ビュービュー吹きつけるのではなく、
ゆったりと、木々をそよがせる程度の風。
そこに、スティーロの息遣いたっぷりのフルートが入ると
温かみがさらに増します。
室内でも心地よい音楽ですが、
ブラジルの浜辺で聴いたら気持ちいいでしょうね。
1999年1月、ローマでの録音。
Toninho Horta(g,vo)
Nicola Stilo(fl)
①Naima
ジョン・コルトレーン(ts)が作ったこの曲を
ここまで「別もの」に変えてしまった例はないでしょう。
オルタのギターで奏でられるイントロは少しぬるめの
空気に溶け込むような、スローで穏やかなものです。
そこにすっと風のようなフルートが入ってきて
メロディを提示します。
その柔らかさ、軽やかさ。
あのコルトレーンの緊張感あるプレイとは異質の
音楽世界が展開されます。
特に素晴らしいのはオルタでしょう。
3分20秒過ぎで、彼がギターのテンポを早めるだけで、
それまでゆったりとしていた空気ががらりと変化し、
とたんに躍動的なトーンになります。
それに合わせ、息の長いソロを聴かせる
スティーロも見事です。
③In A Sentimental Mood
デューク・エリントンの名曲。
エリック・ドルフィーによる名演もあり、
フルートでの演奏が似合う曲ですが、
この演奏も良いです。
スティーロが非常にがんばっていて、
フルートの繊細さだけでなく、意外な息の太さも
聴かせてくれます。
この曲にかける思いがよく伝わってきます。
オルタのギターは全体の中でも「スイングしている」。
もともとブラジルの人なので、ジャズとは異質の
空間が横に広がるようなプレイですが、
曲の雰囲気にぴったり合わせたプレイをしています。
⑩Very Early
アルバムの中でも「キレがある」演奏。
ややアップテンポのギターをバックに、
スティーロが鳥の鳴き声にも聴こえるような
生き生きとしたソロを吹きます。
相当なテクニックを披露していますが、
全く破たんすることなく鮮やかに吹ききっています。
オルタのソロはここでは控え目。
スティーロに思いきりプレイできる空間を与えているところも
またニクイ感じです。
詳しい紹介は省略しますが、
オルタ作曲の②Meu Canario
スティーロ作曲の④Bibi's Mood ⑦Illusion
も佳曲です。
ベテランの二人が余裕をもって語り合った美しい作品。
喧騒が似合う季節が過ぎ、物事を考えたり、
読書をしたくなってしまうような時期にぴったりです。
私もこれから少し本を読んでから休みます。
