グランド・エンカウンター/ジョン・ルイス | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Grand Encounter


きょうは本当にいい天気でした。

外に出て思いきり太陽の光を浴びたかったのですが、

ちょっとした事情で、日中は自宅で過ごすことに。

こうなると、もともとインドア気質の私は読書に耽ってしまいます。


いま読んでいるのは

「ローリング・ストーン インタビュー選集 世界を変えた40人の言葉」

です。

アメリカの雑誌「ローリング・ストーン」が

ミュージシャン、作家、政治家、俳優などに迫った

インタビューが収められています。

1967年刊行の雑誌ということで、読んでいると

20世紀後半の混迷ぶりがよく伝わってきます。

ジョン・レノンが語るビートルズの「乱れっぷり」や、

トルーマン・カポーティが語るミック・ジャガーの人物像など、

興味が尽きません。


その中に印象深い言葉がありました。

俳優であり、映画監督でもあるクリント・イーストウッドが

こう語っていたのです。


「映画を見る側に考えさせるのがA級映画であって

全て説明してしまうのはB級だ」


なるほど!

確かに、くどくどした説明をずっと映画で見せられると

嫌になってきます。

しかし、適度に想像力を働かせる余地があると、

観客は映画を「味わう」ことができます。

一流の人はちゃんと考えているんだなと感心しました。


ジャズにも説明的な音を最小限に抑え、

成功している作品があります。

ジョン・ルイス(p)の「グランド・エンカウンター」。

ルイスはもともと「音数が少ない」ピアニストとして知られています。

この作品では、そんなリーダーの脇を、

これまた「出しゃばらない」面々が固めています。

その結果、非常に奥ゆかしく、聴き手がじっくり味わえる

演奏となりました。


1956年2月、ロサンゼルスでの録音。


John Lewis(p)

Bill Perkins(ts)

Jim Hall(g)

Percy Heath(b)

Chico Hamilton(ds)


①Love Me or Leave Me

これぞ「最小限の音数」のショーケース!

まず、ルイスのピアノがイントロからメロディを弾いていきます。

これ以上音数を絞りきれないのでは、というぐらいに少ない音。

しかし、実によくスイングしている。

スイング感を生み出す要素として、

「空間の使い方」があることがよく分かります。

続いてソロを取るのはビル・パーキンス。

白人で、普段から柔らかいテナーを吹く人です。

ここではルイスに影響されたのか、

優しい語り口はそのままに、音数が少ないソロを展開します。

テナーであるにもかかわらず、軽い寛ぎ感が魅力。

そして、ギターのジム・ホールのソロ。

この人も「弾かないギター」がうまく、「間」を大切にしています。

ピアノとかけあう場面では、音の末尾を伸ばして、

独特の趣のある表情を出しています。

ギターを受けてリーダーのルイスが再登場。

慎ましい雰囲気は変わらず、チャーミングなソロを弾いていきます。

モダン・ジャズ・カルテットでのプレイと比べ、凝ったアレンジがないだけに、

彼のセンスの良さと温かみが出ています。

全体を通して、それぞれのミュージシャンが「さりげない名人芸」を披露し、

聴き手が聴きこむほどに発見がある演奏となっています。


②I Can't Get Started

「言い出しかねて」の邦題で知られる曲。

パーキンスとホールが抜けて、ピアノ・トリオでの演奏です。

①のミドル・テンポに対し、この曲ではぐっとスローに、

ルイスのピアノがバラッドを弾いていきます。

ジャケットのように、温かい藁の上で寝込んでいる

シチュエーションが良く似合う、ほんわかした演奏。

劇的な展開があるわけではありませんが、心に残ります。


③Easy Living

再びクインテットに戻っての演奏。

主役はパーキンスでしょう。

リラックスしながらも集中して、美しいバラッドを

吹き切っています。

しかし、今回驚いたのはホールの存在。

これまで彼がギターでリズムを奏でていたことに

気づいていなかったのですが、

聴いてみると、実に絶妙なバックをつけているのですね。

名演の陰に職人あり、といったところでしょうか。


この作品が自己主張の激しいものではないにもかかわらず、

長きにわたって支持されているのは、

「必要な音だけが残っている」からでしょう。

本当に心に響く音楽というのは、

余計なものがそぎ落とされているのかもしれません。